604 / 901
十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
40
しおりを挟む「ゴホン。このように……お前たちが無傷なのは、たまたま近くにチートな体験学生がいたからなんだぞ? 未熟な俺一人だったら、二人を無傷では助けられなかった。痛い思いをするところだったんだ、わかるか?」
「は、はぁい~……」
「こいつ化物かようあっ!?」
しゅんとして肩をすくめるウィニアルトに対して、違う着眼点に気を取られているクテシアス。
彼には必殺デコピンをもう一度食らわせる。話はちゃんと聞くものだ。
要するにだな。
アゼルがいなければみんな木っ端微塵だったかもしれないというわけで、その危険性をきちんとわかってもらわなければならない。
俺は厳しい口調でクテシアスを睨み、されど怒鳴りつけたりはせずコンコンと語る。
「クテシアス、お前は授業中の先生の話を聞いていなかったな? 大きな魔法陣は精密性に欠けるから実用的ではないと言っただろう?」
「ぅぐっ」
「それをまだ見ながら書く覚えたての段階でするなんて、暴走するに決まっているじゃないか。好奇心は猫を殺すんだぞ」
「ぐ、ぐ……っ!」
「お前は優秀だが、迂闊だ。それはよくない。命をかけるところは、間違えてはいけないのだ。わかるな?」
いけないところはキチンと叱る。諭す。
若さ故の過ちで死んでしまっては元も子もない。悪ふざけは死なない程度に。
命懸けの勇気なんて、なにかを守るための戦場以外、振り絞っちゃダメだ。
「基礎を覚えてからステップアップを目指していけば、お前はもっと強く……」
「~~~ッうううう! っせ、せんせぇは俺の気持ちをわかってねぇ~っ! 俺だって好きで暴走させたわけじゃねぇよ!」
しかし俺なりにいけないところを指摘すると、クテシアスは地団駄を踏みながら唸り声をあげて叫んだ。
俺は驚いたが、文句は言わずに黙る。
「俺には大きい魔法陣を書かなきゃなんねぇ理由があったんだ! そもそも、迂闊だろうがチャレンジしないと成長しないだろっ!? 一度の失敗で俺を推し量るなんて、ナンセンスだってのっ! 大事なのはなぁ、理屈じゃなくて気持ち!」
「ん」
感情が高ぶっているクテシアスは、怒りで顔を真っ赤にして、食ってかかった。
由緒正しい強力な魔族の家系である彼は、あまり叱られたことがなかったのだろう。
本人も優秀だったので、こんな大きな失敗もそうはなかったのだ。
「それを終わったことを蒸し返して、そんなにガミガミ言うこたないだろぉ! 過去は変えられないし、やっちまったもんはやっちまったの! もうしねぇからいいじゃね~かっ!」
「ん」
「しかもさぁ、理由はなんでも俺たちは無傷で無事なんだぜ!? 一週間しか一緒にいなかったくせに、上から俺を偉そうにしかんなばぁか! 堅物クソ真面目ばぁかっ!」
「人にバカって言ったらだめだってライゼンに教えてもらわなかったのかテメェ」
──バキィッッ!!
「グアァッ!?!?」
「ん?」
突然だ。
抑揚の少ない声が聞こえたと思ったら、思いの丈を感情のままに叫んでいたクテシアスが、俺の目の前から消えた。
そしてドゴォォォオオォンッ!! と大きな衝突音と土煙が上がり、近くの大木に向かって吹き飛んでいったらしいなにか。
もとい、消えたはずのクテシアス。
41
お気に入りに追加
2,688
あなたにおすすめの小説



いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる