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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
38
しおりを挟む「よし、わかった。アゼルがお姫様になりたいなら、後でいくらでも抱っこしてあげるからな」
「このアホアホにぶちん先生め! どちらかというと俺は、おっ王子様ポジションになりてぇんだよ!」
「? あぁ、王子様抱っこか。よくわからないがそういう抱っこが「ねぇからな?」ないのか」
お姫様抱っこがあるのだから王子様抱っこがあるのかと思った俺を、アゼルはバッサリ切り捨てた。
拗ねたアゼルはポイッ、と雑にウィニアルトをお姫様抱っこから解放する。
「わぁっ!」
突然降ろされた、いや投げられたウィニアルトは驚いた声を上げつつも、どうにか着地した。
スウェンマリナで俺を抱いた時は介護かと言うほど丁寧におろしてくれたのだがな。
機嫌が悪いのかもしれない。
着地したウィニアルトを見つめ、安否を確認しながら納得した。
よし、どうやらウィニアルトにも大きな怪我はないみたいだ。
本当によかった。肝が冷えたぞ……。
無傷のウィニアルトに安堵の息を吐く。
そして俺も黙り込んでいるクテシアスを、そっと地面におろした。
黙る気持ちはよくわかる。
ウィニアルトは無傷なんだが、その、なんだ。
ちょっと、病にかかったみたいだ。
クテシアスにお姫様抱っこをする俺へ抗議することしか考えていなかったアゼルは、全く気づいていない。
アゼルに興味がないのか鈍いのかわからないが、俺とクテシアスにはすぐにわかった。
「ほぁ~……ハウリングくん、かっこいい~……」
「! うぅ…っ! やはり、うぅぅ憎きハウリングぅぅ……っ!」
──そう。
ウィニアルトは危機的なところで颯爽と現れ抱きとめてくれたアゼルに、すっかり頬を染めて見惚れてしまっている。
有り体に言えば、好意を抱いているようなのだ。
恋愛的な一目惚れと言うやつなのかどうなのかはわからないが、チラチラとアゼルを伺ってはもじついている。
クテシアスはアゼルに故郷の村でも焼かれたのかと言うくらい、鬼気迫る視線を送っていた。
けれどアゼルはアゼルで、なぜかそわそわしながら俺の様子を伺っている。
ふむ……もしかしてこれは、あれだな?
昼ドラでありそうな、泥沼の四角関係と言うやつだな?
クテシアスが恋しているウィニアルトは、アゼルが好き。
しかしアゼルは実は魔王様で俺の旦那さんなので、俺のことを愛してくれている。
すごい関係だ。不倫じゃないか。
俺は爆発で荒れたグラウンドで巻き起こった突然の昼ドラ展開に、混乱を通り越してミーハーな気持ちになってしまった。
四角関係。初めてだ。
俺としては、もし恋愛ではないなら、ウィニアルトとアゼルのかっこよさについて語り合いたいのだ。
できればかわいいところも語り合いたいな。
恋敵ではなくアイドル的な恋なら、それも許されるかもしれないぞ。
「ふーむ。俺の心理を表す言葉があったはず……」
なんだったかな。
前にリューオに教えてもらったんだ。
リューオはアゼルのいいところの話なんて聞いてくれないので、俺がそうしてみたいと溢したら、そう言うのをなんというのか教えてくれた。
ええと、そうだ。
同担大歓迎だ。
愛憎渦巻く三人を眺めながら、俺は一人、呑気にそんなことを考えていた。
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