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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園

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(ふふふ……俺もアゼルのツンでデレの深読みをできるようになってきているからな)

 心持ち得意になって「ツンデレのアゼルで真意を読む能力がついたんだ」と言うと、キャットには「魔王様はシャル様関連ベリーイージーですよ」と親指をたてられた。

 う、ううん。俺関連が俺にとっては一番難しいんだぞ? 客観視しにくい。

 キャットがゼオを好きなことは秘密にしてほしいと言われたので、俺たちはここだけの話ということにし、秘密を守ると固く握手をした。

 馬車の中コンビの絆は本物である。

「それじゃあシャル様! 外に出て形態変化をするので俺の背に乗ってくださいね!」
「ああ、ありがとう」

 にこやかな笑顔うかべたキャットに感謝し、笑みを返す。

 キャットは意気揚々として、馬車の扉をガチャ、と開いた。

「ふん、不甲斐ない上官に代わって後は俺がどうにかしてやるから、貴様らは散れ。馬車の後片付けくらいならさせてやる。感謝しろよ?」
(意訳:俺に任せて帰還してもらっても大丈夫ですよ! あっでも馬車は連れ帰ってほしいです……!)
「相変わらず不遜なやつだなァ、キャットォ~、俺だってシャルを乗せてェのにずるいぜ」
「ガキが。ガド長官は、無駄な旋回と螺旋がすぎる。もう少し上官らしく見本になるようなことをしたらどうだ。そんな飛行で運ぼうなんて、妃が落下死したら命はないと思え」
(意訳:ガド長官は難しい旋回や螺旋を使って自由に飛んで、しかも速いなんてすごいです! だけど見本にするには難しすぎますし、シャル様を落としてしまったら大変ですから! ここは俺が!)

 ブワッと風をまとったかと思うと、すぐに馬車の外へ現れたのは、金色がかったグリフォールだ。

 俺はそれによいしょと跨りながら、全くキャットの言葉の真意がガドには伝わっていないのがわかって、なんとも難儀な性分だなと心配になってくる。

 ガドは乱暴な言い方をされても怒らないが、アゼルにもこんな感じなんだろうか。
 それはそれで大物だな。

 もふもふの毛皮を掴んで準備万端の俺と俺を乗せたキャットを見て、腕を組んでそばにいたゼオが、不意に淡々と告げた。

「キャット副官。その人、落とさないでくださいね。一緒に貴方の命も落ちるので」
「ピュッ」
「まあ、大丈夫だと思いますけど。キャット副官は竜よりノロマかもしれませんが、真面目で仕事熱心ですから」
「!!」

「──俺も、そういうやつは嫌いじゃない」

「ピィィイイイィィイィイイィッ!!」
「おあああああああああっ!?」



 ──こうして。

 恥ずかしさのあまり、鈍翼とは思えない速度で魔王城へ突っ込んでいったキャットによって、無事に怪獣対戦の会場へたどり着いた俺だったが。

 まさか羞恥が爆発していたキャットが、二人の間に割って入って、叫びながら四方八方に魔法を放つとは思わなかった。

 ……そして反射の勢いでうっかりキャットを瀕死に追い込んだのは、アゼルである。
 物凄くしまった! という顔をしていた。

 けれどダダをこねているのを俺に見られたことに気がついたアゼルは、あわあわとしてだな。

「別に帰ってくんのなんざ、待ってねぇよ! 今来たとこだぜッ!」なんて言い、言葉とは裏腹に百年ぶりの再会かと思うほど、激しく抱きついてくるとも思わなかった。

 つまり、今日一番になにが言いたいかというと、だ。

〝離れている時間が長いほど、アゼルのハグは俺の意識を刈り取る絞め技になる〟

 ということである。

(……明日は今日より、早く帰ってこよう)



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