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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
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しおりを挟む「それでどうやっていこうか」
「俺が乗せてやるぜェ~」
「グロッキーになってしまう」
「じゃあ俺が、と言いたいですけど命が惜しいので無理です。俺は抱き抱えてしか運べませんから」
「それはな……」
未だに戦闘音が響く魔王城を尻目に、俺たちはのんびりと会議をして移動法を考える。
しかしままならないな。
俺が誰かに抱かれて帰るなんて、勢い余ってゼオが殺られてしまう。
「ン~そうだなぁ~」
そうやって三人で考え込んでいると、俺をなでるのにようやく満足したらしいガドが、頭から手を離した。
そしてポンと拍子を打ち、半身を乗り出し馬車の扉をガチャっと開ける。
そこからずっと黙り込んでいた自分の副官──キャットに、おいでおいでと手をこまねいた。
「キャットォ~、お前背に乗せて運んでやれよォ。俺の命令だぜ」
「ああ、その手があったか」
ニンマリ笑うガドの案に俺もなるほどと合点がいって、彼にならい拍子を打つ。
そうだ。キャットは空軍であり、グリフォール魔族なのだ。形態変化ができる。
魔物のグリフォールは背に乗ることはできないが、魔族の形態変化なら危険はない。
そして高速飛行はできないので、ライド・オン・ガドのようにグロッキーになることもないのだ。
愛嬌があって人好きのする明るいキャットなら、きっと安全に俺を魔王城まで運んでくれるだろう。
屈強な竜ではないので、もしかしたら彼にとって俺はちょっと重いかもしれないが……。
ううん。こんなことなら、ダイエットをしておくべきだった。
だが俺はそれをするとすぐに筋肉がなくなって、みすぼらしくなってしまうからな……悩みどころだ。
「まぁそれしかないな……キャット副官、早急にお願いします」
話を聞いたゼオも頷き、ガドの横から馬車の中へ顔を覗かせ、キャットに声をかけた。
満場一致で期待のこもった目を向けられ、うつむき気味に座っているキャットがそっと顔を上げる。
「許可なく俺に話しかけるなといつも言っているのが、わからないのか? そうやって貴様等がネズミにも劣る小粒脳だから、自分の部下すら止められないのだ。恥を知れ、このドグサレ共が」
「ぅよし! 一旦閉めるぞ」
「お?」「は?」
バタン、と反射的に窓を閉じ、一旦コマーシャルへと入る。
コマーシャルとシャルはかけてない。
ついさっきまでの明るく愛らしい挙動と言動からは、まるで信じられないほど冷たい対応。
敬愛する上官と最推しの副官へ、鼻で笑いながらとんでもない言葉を吐き捨てたキャットに、思考タイムが必要になったのである。
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