上 下
586 / 902
十一皿目 魔界立ディードル魔法学園

21

しおりを挟む


「それでどうやっていこうか」
「俺が乗せてやるぜェ~」
「グロッキーになってしまう」
「じゃあ俺が、と言いたいですけど命が惜しいので無理です。俺は抱き抱えてしか運べませんから」
「それはな……」

 未だに戦闘音が響く魔王城を尻目に、俺たちはのんびりと会議をして移動法を考える。

 しかしままならないな。
 俺が誰かに抱かれて帰るなんて、勢い余ってゼオが殺られてしまう。

「ン~そうだなぁ~」

 そうやって三人で考え込んでいると、俺をなでるのにようやく満足したらしいガドが、頭から手を離した。

 そしてポンと拍子を打ち、半身を乗り出し馬車の扉をガチャっと開ける。

 そこからずっと黙り込んでいた自分の副官──キャットに、おいでおいでと手をこまねいた。

「キャットォ~、お前背に乗せて運んでやれよォ。俺の命令だぜ」
「ああ、その手があったか」

 ニンマリ笑うガドの案に俺もなるほどと合点がいって、彼にならい拍子を打つ。

 そうだ。キャットは空軍であり、グリフォール魔族なのだ。形態変化ができる。

 魔物のグリフォールは背に乗ることはできないが、魔族の形態変化なら危険はない。

 そして高速飛行はできないので、ライド・オン・ガドのようにグロッキーになることもないのだ。

 愛嬌があって人好きのする明るいキャットなら、きっと安全に俺を魔王城まで運んでくれるだろう。

 屈強な竜ではないので、もしかしたら彼にとって俺はちょっと重いかもしれないが……。

 ううん。こんなことなら、ダイエットをしておくべきだった。

 だが俺はそれをするとすぐに筋肉がなくなって、みすぼらしくなってしまうからな……悩みどころだ。

「まぁそれしかないな……キャット副官、早急にお願いします」

 話を聞いたゼオも頷き、ガドの横から馬車の中へ顔を覗かせ、キャットに声をかけた。

 満場一致で期待のこもった目を向けられ、うつむき気味に座っているキャットがそっと顔を上げる。


「許可なく俺に話しかけるなといつも言っているのが、わからないのか? そうやって貴様等がネズミにも劣る小粒脳だから、自分の部下すら止められないのだ。恥を知れ、このドグサレ共が」

「ぅよし! 一旦閉めるぞ」
「お?」「は?」


 バタン、と反射的に窓を閉じ、一旦コマーシャルへと入る。
 コマーシャルとシャルはかけてない。

 ついさっきまでの明るく愛らしい挙動と言動からは、まるで信じられないほど冷たい対応。

 敬愛する上官と最推しの副官へ、鼻で笑いながらとんでもない言葉を吐き捨てたキャットに、思考タイムが必要になったのである。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

リオ・プレンダーガストはラスボスである

BL / 連載中 24h.ポイント:31,134pt お気に入り:1,810

推しを陰から支えるのが僕の生きがいです。

BL / 完結 24h.ポイント:1,349pt お気に入り:6

普通の学園生活を送っていたはずなんだが???

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:311

私を愛して下さい イチャラブしたこと無いんです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:424

悪妻なので離縁を所望したけど、旦那様が離してくれません。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,832pt お気に入り:4,592

敏感リーマンは大型ワンコをうちの子にしたい

BL / 完結 24h.ポイント:1,819pt お気に入り:374

処理中です...