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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
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しおりを挟む(な、なんなんだ? どこをミスした? アゼルに大口叩いておいて、俺は教師に向いていないのか?)
クテアシスの絶叫を皮切りに教室の静寂は破られ、一斉にざわめきだす生徒たち。
「ね、ねえなにしたの先生……」
「わかんない……! わかんないけどハンバーグの空気抜くみたいにポンポン重ねてた! 繋ぎ目見極めしてないみたいなやつ! 魔法陣オタクか、変態かも……!」
「まじかっ、そんなの相当慣れてないとできねぇだろ!? ずれたら不発なんだぞ? どんだけ数こなしてんだよっ! 変態じゃね?」
「でも魔法陣なんか毎日使ったら、頭こんがらがって倒れるでしょ? すぐ理解できるほどセンスあるか、あの地獄の頭痛に耐えないと無理だと思うけど……! 変態なのかな?」
「いいやその前に、あの数の魔法陣全部のテンプレ保持してんのがキモイ! 魔法陣に書き込む古代文字を完璧に理解してるってことだぜ? 変態だろ?」
「そりゃあ古代魔法陣書くとか言ってんだから文字の読み書きどころか、陣体系まで覚えてるってことだろ! 何時間もらってもミスったら全部跳ね返るえげつないもん、書けるか! バカじゃねぇのアイツ! 変態だわ!」
俺は聖徳太子ではないので、口々に俺のことを罵る生徒たちの言葉が全部は聞こえず、おろおろしてしまう。
結局どういうことなんだ?
とりあえず変態ということだけわかった。
わかったが、なぜそうなったかはわからないからわからない。
俺は合格なんだろうか。
臨時教師を続けてもいいのかどうか。
「みんな、みんな、おーい」
普通に呼びかけてみても、誰一人反応しない始末。
これじゃあいけない。いい加減授業を進めなければ、仕事の意味がない。
俺はざわめく教室にふうと息を吐き、両手を叩いて「授業をするぞ、静かに」と大きめに声をかけた。
途端に生徒たちはシン、と凪ぎ、なんとも言えないものを見る目で俺を見つめる。
そんな目で見られると、不合格だったのがなんとなくわかるが──怯んでなんかいられないな。
仕事、と言われると後退の二文字はない。
仕事をするか死ぬか。
それが社畜のブラック脳。
経験だがそこまでいくと気がついたら呼吸と仕事しかしていない生き物になるので、良い子は真似しちゃだめだ。
シャルさんだからできることだとも。
「未熟かも知れないが一週間、俺が魔法陣学を教える。みんなの糧になれるよう努力するので、どうか諦めてほしい」
ゴホン、と咳き込み真剣な顔でしっかりと告げる。
そしてチョークを片手に黒板に授業の内容を書いていきながら、俺は今日の授業を始めた。
「──それじゃあ今日は任意起動型魔法陣の刺突と砲撃の仕組みと成り立ちを、古代文字で書く。ので、それを解読して実際に魔力で書いてみてくれ」
「「「できるかぁぁぁぁぁぁああッッ!!」」」
──臨時教師一日目・日誌。
今日は丸一日、生徒たちに気持ち悪いと馬鹿を連呼されてしまった。面目不甲斐ない。
だがみんな全力でぶつかってきてくれているようで、俺の拙い授業を、元気な声でサポートしてくれた。
迷惑をかけているのだろうが、返事が返ってくるのが嬉しくつい和んでしまう。
教師も生徒と共に成長するものだな。
最終的に全員が俺を、アッサディレイアの家名から取って「アディ先生」と呼んでくれるようになった。
胸が熱くなったぞ。
明日も頑張ろう。
追記。
ところどころで「全自動魔法陣描画装置」という言葉が聞こえたような。
けれどなんのことかは、誰も教えてくれなかった。もう少し仲良くなれば教えてくれるかもしれない。
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