575 / 901
十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
11
しおりを挟む◇
学園都市ディードル。
住民でもある学生たちを守るため、堅牢な外壁と外堀で埋められた、年若い魔族が多数を占める学業の街だ。
小高い丘の上に作られた街は周囲を森に囲まれ、そこには多数の魔物が住み実戦訓練にも適している。
森に住む魔族とは共生関係にあるらしい。
前知識はそのくらいだ。
長いようで短い空の旅を終えて到着したディードルは、学園を中心に街が取り囲む円形の都市だった。
俺を送り届けたキャットは名残惜しそうにしながらも、また午後に迎えに来るからと帰って行った。
チラチラ後ろを、というより後ろ向きに歩いて馬車に乗り込んでいたので、転ばないかハラハラしたぞ。
無事学園内にたどり着いた後は、ケンタウロス魔族の学園長から学園や授業の説明を受ける。
概要をきちんと理解してから、俺はようやく出席簿や教科書を片手に、この一週間通うことになる魔法陣学の教室へやってきた。
一通りのやり方は教えてもらっている。
内容は教科書に習い、ある程度好きに教えればいいみたいだ。
一応最終日にテストをするらしいが……授業構成ですら自由なのが魔界らしい。
そのぶん、教師の力量で生徒が学べるものも変わってしまうけれどな。
「責任重大か……できるだけ力になれるようにしないとな」
──よし、頑張ろう。
始業ベルがわりの鐘がゴーンゴーンと鳴り響き、俺は深呼吸をしてから、無駄に豪華な内開きの扉をガチャ、と開いた。
「…………」
俺が教室に入ると二十人の生徒たちは静かに各々の席についていて、それぞれの態度で俺を迎えてくれる。
種族も様々だ。
いろんな気配を感じる。
けれどあまり殺気は向けないでほしいな……反応してしまうじゃないか。
コツ、コツ、と床板を鳴らし、教卓の前に立つ。
生徒席が階段状になっているので、底にあたる教卓に立つと見下ろされている状況に、少し緊張した。
「はじめまして、俺はシャウルー・アッサディレイアという。今日から一週間……前任の先生の代わりに、魔法陣学を教えることになった。短い間だが、仲良くしてもらえれば嬉しい」
そうやって黒板に名前を書きながら、仮の自己紹介をする。
にこやかに笑ったつもりだが、だめか。
そこかしこからひそひそと小声で話す声が上がり始めた教室内。
うぅん……これは、どっちだろうか。
歓迎されているのかいないのか、わからないぞ。
「なぁせんせぇ~。せんせぇの名前は学会で聞いたことないけどさあ~、ほんとに俺らに教えられんのぉ~?」
どうしたものかと思案する俺に、窓際の席から間延びした声が聞こえた。
そして彼の声に合わせて、アハハと他の生徒たちが笑う。
「ん?」
視線をそちらにやると、そこには真っ赤な髪がよく目立つ男子生徒がいた。
それを視認すると同時に、俺は目を丸くして、硬直してしまった。
(この子は……ものすごくたくさん、ピアスがついているじゃないか……)
いやはや。驚くほどリングピアスが両耳についていたから、ついな。
痛くないのだろうか、と心配からすぐには反応を返せない。
だって耳がルーズリーフみたいになっているんだぞ? 頭が重くて頭痛を起こしたら、たいへんだ。
ルーズリーフな彼は、学園長が用意してくれた写真付き名簿によると──マンティコア魔族のカイト・クテシアス。
コウモリの翼に真っ赤な髪。蠍の尾を持つ魔族だな。
そして彼はどうやら、クラスのリーダー的な存在みたいだ。
40
お気に入りに追加
2,669
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる