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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園

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 ◇


 学園都市ディードル。

 住民でもある学生たちを守るため、堅牢な外壁と外堀で埋められた、年若い魔族が多数を占める学業の街だ。

 小高い丘の上に作られた街は周囲を森に囲まれ、そこには多数の魔物が住み実戦訓練にも適している。

 森に住む魔族とは共生関係にあるらしい。
 前知識はそのくらいだ。

 長いようで短い空の旅を終えて到着したディードルは、学園を中心に街が取り囲む円形の都市だった。

 俺を送り届けたキャットは名残惜しそうにしながらも、また午後に迎えに来るからと帰って行った。

 チラチラ後ろを、というより後ろ向きに歩いて馬車に乗り込んでいたので、転ばないかハラハラしたぞ。

 無事学園内にたどり着いた後は、ケンタウロス魔族の学園長から学園や授業の説明を受ける。

 概要をきちんと理解してから、俺はようやく出席簿や教科書を片手に、この一週間通うことになる魔法陣学の教室へやってきた。

 一通りのやり方は教えてもらっている。
 内容は教科書に習い、ある程度好きに教えればいいみたいだ。

 一応最終日にテストをするらしいが……授業構成ですら自由なのが魔界らしい。

 そのぶん、教師の力量で生徒が学べるものも変わってしまうけれどな。

「責任重大か……できるだけ力になれるようにしないとな」

 ──よし、頑張ろう。

 始業ベルがわりの鐘がゴーンゴーンと鳴り響き、俺は深呼吸をしてから、無駄に豪華な内開きの扉をガチャ、と開いた。

「…………」

 俺が教室に入ると二十人の生徒たちは静かに各々の席についていて、それぞれの態度で俺を迎えてくれる。

 種族も様々だ。
 いろんな気配を感じる。

 けれどあまり殺気は向けないでほしいな……反応してしまうじゃないか。

 コツ、コツ、と床板を鳴らし、教卓の前に立つ。

 生徒席が階段状になっているので、底にあたる教卓に立つと見下ろされている状況に、少し緊張した。

「はじめまして、俺はシャウルー・アッサディレイアという。今日から一週間……前任の先生の代わりに、魔法陣学を教えることになった。短い間だが、仲良くしてもらえれば嬉しい」

 そうやって黒板に名前を書きながら、仮の自己紹介をする。

 にこやかに笑ったつもりだが、だめか。

 そこかしこからひそひそと小声で話す声が上がり始めた教室内。

 うぅん……これは、どっちだろうか。
 歓迎されているのかいないのか、わからないぞ。

「なぁせんせぇ~。せんせぇの名前は学会で聞いたことないけどさあ~、ほんとに俺らに教えられんのぉ~?」

 どうしたものかと思案する俺に、窓際の席から間延びした声が聞こえた。

 そして彼の声に合わせて、アハハと他の生徒たちが笑う。

「ん?」

 視線をそちらにやると、そこには真っ赤な髪がよく目立つ男子生徒がいた。

 それを視認すると同時に、俺は目を丸くして、硬直してしまった。

(この子は……ものすごくたくさん、ピアスがついているじゃないか……)

 いやはや。驚くほどリングピアスが両耳についていたから、ついな。

 痛くないのだろうか、と心配からすぐには反応を返せない。

 だって耳がルーズリーフみたいになっているんだぞ? 頭が重くて頭痛を起こしたら、たいへんだ。

 ルーズリーフな彼は、学園長が用意してくれた写真付き名簿によると──マンティコア魔族のカイト・クテシアス。

 コウモリの翼に真っ赤な髪。蠍の尾を持つ魔族だな。
 そして彼はどうやら、クラスのリーダー的な存在みたいだ。



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