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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園

02

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 昔話をしよう。確か、人間国に新しい関所ができてしまった時だ。

 お金に困っているのかそこの税金が重く、魔界へくる商人が足止めを食ってしまったんだったかな。

 そのせいで、俺が気に入ったと言ったらアゼルが定期購入をし始めた人間国の上質なはちみつが、予定日に届けられなかった。

 アゼルと執務室で休憩している時にカプバットの報告を受け、関所の話を知った俺だが、そのくらいは別に構わない。

 あれは特別に美味しくてお菓子に使っていたから残念だが、死ぬわけでもないしな。
 だからそのままそう伝えたんだ。

 なのに──ちょっと散歩してくる、なんて出て行ってずいぶん遅いなと思ったら、アイツは関所をまるごと更地に変えて帰ってきたんだぞ。

 当時俺は散歩が長かったなと思いながらも、アゼルがツンと差し出すはちみつが嬉しくて、ただ喜んだ。

 買い出しにでも行ってくれたんだな、なんて呑気に考えてたっぷりとお礼をしたのだが……。後で真実を聞いて、石化したわけである。

 一応ちゃんとはちみつは買い取ってきたらしい。商人は気絶していたからお金と交換したと、得意げに胸を張っていた。

 そうじゃないんだが、そういうところはちゃんとしているのがアゼルのいいところだ。ああ見えて真面目だからな。

 閑話休題。
 過去回想とも言う。

 そんなわけで、このエピソード以外にもいろいろとやらかしているアゼルなら、勢い余って街一つ消しかねない説得力があったのである。

 迂闊な発言で関所が消えたと言うと、リューオが「とってこいってお前がなんの気なしに投げたボールを取るために、壁ブチ抜いて障害物全部を蹴散らすアホ犬」と言っていた。

 俺はわかるようなわからないような、なんとも言えない気持ちだったな。
 一応アゼルなりに、ブチ抜く壁は選んでいるんだが。

 アゼルは魔族らしく邪魔者をすぐ殺すと言うし、実際殺そうとはする。

 しかし人間の価値観だとよろしくないと理解しているので、うっかりしない限り命は蹴散らさないようにしてくれているのだ。

 それが最大限の譲歩らしいが、流石に一週間ともなれば一歩たりとも譲らないかもしれない。
 特技は殲滅魔法だぞ、うちの旦那さんは。

 俺はそういう話をしてから、気持ちの上では合意したいけれどアゼルにバレないようにできるかどうか、という悩ましい課題をライゼンさんに投げかけた。

「ええと、シャルさんは嘘がお上手ではないことと、魔王様は嘘を嫌うので、直接交渉に持っていきましょう。その際説得材料を多く持っておいたほうがいいですね」
「うっ、そうだな……。取り敢えず帰ってくる時間は決めておいて、なにがあったかも報告するとしようか。日誌をつけて提出するとか……アゼルの希望も聞こう」
「そうですね、そのほうが良いかと……。もちろん送迎は強者をつけますし、街の中に危険はないですよ。後は人間であることを隠すため、半日しか効果がないのですが擬態薬を使いましょうね。生徒たちには正体を隠して、偽名を使うのです。バレて絡まれると厄介なので……!」
「うん、それがいい。揉め事になりそうなことははじめから潰しておこう。じゃあ別人としてプライベートな設定も考えようか」
「はい、じっくり考えましょう」

 ──こうして俺とライゼンさんは、この作戦の今後を担う重大な会議を行う。

 どうにかアゼルから許可をもぎ取るべく、真剣に仮の設定について議論を交したのだった。



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