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十皿目 ワンとニャー

07※微

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「はっ、はっ、んぐ……っあぁ~……もうだめだ……く、くすぐりは勘弁……」
「フフン。これにこりたら無駄な心配も俺で遊ぶのも諦めて、お前は俺に抱かれていればいいんだよ。後もうクリップは禁止だぜ……!」
「まだやってな、っふ、ん……っ」

 しばらく擽られてあえなくダウンした俺に満足げなアゼルは、打って変わって労るようにキスをする。

 乱れた呼吸を整えるために薄く開いていた唇を、強引に割り入ってくる舌。
 弁解を聞く気もなく口内を翻弄され、俺は返事の代わりに舌を絡め返した。

 さっきのはそれこそお遊びのような擽りだったが、本人は至って真剣にお仕置きしているつもりだからな。

 このキスは、鞭の後の飴なんだろう。
 それなら甘んじて受けようか。

「ぅん……はっ……」

 アゼルの首に腕を回し自分から吸い付いて、せっかくの飴を悦んで味わった。何度も角度を変えて深く口付け合いながら、鼻から抜けるような甘い声を漏らす。

 お互いの熱い吐息が頬を掠めると、空気が淫猥なものになり、ゾクゾクと粟立つ。気持ちいい。舌が感じているのだ。

「ふっ……ん、ンぅ……」

 そうして夢中で貪っているように見えて抜け目のないアゼルは、嬉々としてさりげなく体も弄り始めた。

 器用な熱い手が剥き出しになった俺の胸元を指先で弄び始める。
 もう片方の手は薄い布一枚になった下半身へ伸ばされ、布越しに陰茎を掴まれやわやわと揉まれた。

 二つを責められだせば、ビクッと筋肉が震えて身のうちに熱を沸き立たせざるを得ない。

 くそう、俺の真似事じゃ、ここまでうまく手を出せないぞ。アゼルの手の早さは玄人だ。

 負けじと首にしがみついていた腕を一つ解いて、そっとアゼルの肌をなぞりながら下に伸ばしてみる。

「ん、はぁ……ん……」
「ふ」
「んぅッ……」

 しかし間をおかず咎めるようにぐりッと突起を指先で捻られ、更に舌を甘噛みされ、俺はくぐもった悲鳴を上げて降参した。

 強い。アゼル強い。
 俺はどうしたら性技で勝てるんだろうか。

 真面目で勤勉なアゼルは、俺の性感帯をメキメキと鍛えてしまうのだ。
 俺だっておそらく、簡単にスイッチの入るチョロい男だと思う。

「ぁ……っは、ぁっ……」
「む、……ふんふん……桃の食いすぎで甘ぇ匂いすんだよな、シャル」
「そんなこと、んっ、ん……っ」

 息苦しそうにすれば合間に呼吸をさせてくれたので、ふやけた表情のまま息を吸う。

 ついでに毎日桃を食べているせいで体臭が甘いと言われ、首筋のあたりを舐めながら嗅がれた。

 そんなことない、と否定する間もなく、息継ぎは終わりとばかりにまた唇を塞がれる。

 会話もままならないぞ。
 無限ループじゃないか。

 アゼルだって桃の香油を毎日欠かさず洗いたての髪に付けているため、日々ピーチな魔王なのに。

 基本的に美容には興味がないのだが、髪だけはふっかふかのサラッサラヘアーである。
 しかしなにもしなくてもピチピチなので、最早全身ピチピチピーチだ。

 アゼルは大亀の魔王かと思ったが、ピーチな姫のほうだったか。

「ふあぁぁっ……!」

 口内の凹凸をなぞるように蹂躙されながらそんなことを考えていると、俺を見ろとばかりに素肌の背中を指の関節で這い上げられた。

 まさかそこで、と思われるだろうが、俺は背中が弱い。
 アゼルはわかっていてやっている。

「ふぁ、っ……あっ、そっ、ぁ……っ」
「ん」

 ひたすらしつこくキスをしながら、胸と背中を強弱をつけて愛撫され、ようやく唇が離れた。
 舌がヌル、と引き抜かれる。




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