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十皿目 ワンとニャー

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 にゃーにゃー言ってしまったノーマルな俺は、リューオにあれこれと説明を受けてネコの意味を理解した。
 どうやら受身側の話だったみたいだ。

 リューオはふてくされた表情でミステイクを繰り返しながら、攻め手側の悩みを語り始める。

 ことの発端は、初めて夜を共にしたある日のことだ。

 ユリスとリューオは現在、付き合って四ヶ月くらい。
 お互い城に住んでいることもあって手の早いリューオにしてはよく我慢したが、四度目のデートの後に我慢できず部屋に連れ込んだ。

 小柄なユリスだ。抱え上げればおそらく人類最強のタフな肉体を持つリューオからは、逃げられない。

 猪突猛進で俺様気味のリューオは、まんまと押し倒すことに成功した。

 俺のイメージだが、血統書付きの子猫であるユリスと、大型の虎であるリューオの猫カップル。

 そうして素直じゃないユリスがツンツンしつつも本気で嫌がっていなかったので、欲求に忠実なまま、リューオは押せ押せで本懐を遂げたらしい。

「ん? 遂げたのか」

 そこまで聞いた俺には、悩む必要性がよくわからず、首をかしげた。

 拒絶されたわけでもなく二人楽しめたなら、問題はないはず。
 むしろ後はいかにイチャつくかしかないと思うのだが。

 そんな思考を読み取ったのか、リューオはキッ! と目を吊り上げて、ボードの上の白駒を片っ端から黒駒にひっくり返し始めた。

 よかった、これで勝たせてあげられるな。

「だァからそれ以来部屋に誘っても来てくれねえんだよッ! どういうことだバカ野郎ッ!? マジで俺のテクニックの問題だったのかッ!?」
「ううん……? 俺はお前に抱かれたことがないから、それは答えてあげられないが。ちなみにこれまでの経験ではどうだったんだ?」
「アァン? 男にも女にもこれといって不満を持たれたことはねぇええぇぇ……ッ! 強いて言うなら、浮かれてたから若干サドっぽかった……? 軽い羞恥プレイもしたか……? ぐらいだぞオイ。普通じゃね?」
「痛い系と恥ずかしい系か……それは人によるな……」

 傍らに用意してあった桃のコンポートにフォークを突き刺して、ひとつ食べる。

 なるほどな。SMは人によって許容範囲が違うと思う。
 それも初回でしたのなら、地雷だった場合物議を醸す気がするぞ。

「でもよォ、別に痛めつけちゃいねぇッて。ちゃんと慣らしたしよォ。俺はどっちかってーとかわいがりたい派だかンな! カワイイは愛でるべき」
「うーん……ということはかわいがりすぎたとかか」
「ンなこともねぇ! アホみたいにしつこく指責めしたり、あちこち噛み付いたりもしねぇわ。それこそ縛ったり無理だと言うまでイカせたりなんかの典型的なヤツもしてねぇ! 押し倒したのにそこまでやったら、あのユリスだし変態呼ばわりされっからな」
「うん? そのくらいならまだ許容範囲じゃないか?」
「え?」
「え?」

 思ったまま答えると驚かれ、俺は驚かれたことに驚き、ふたりで見つめ合った。一瞬間ができる。

 ええと、ダメなのか? でも恋人同士ならそのくらい大丈夫だと思うが……。
 というか、全部俺は日常的に経験済みだ。



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