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後話 まだまだ、受難体質大河勝流

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 ──コンコン。

 そうしていると、突然部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。

「っだ、誰?」
「俺だ、魔王」
「えっ魔王様!? やだもう部屋片付けてないよおおおぉ~~っ!」
「それはどうでもいいから入るぞ」

 うん? 訪問者は俺の旦那様のようだ。

 キャーッと舞い上がって、ユリスはテーブルの上に新しいカップを用意し始める。

 キョトンとしているうちにガチャ、と扉が開いていつも通りのアゼルが入ってきた。

 そして「はっ!」っとして俺を見つけ、一瞬背景に満開の花畑を背負う。

 顔は仏頂面のままだ。
 空気感だけで喜ぶなんて、器用だな……かわいいな……。

「んっ、シャル。仕事終わったぜ、二日分だ。なぁ、早かったろ?」

 いそいそとソファーに座る俺の隣に当たり前のように座るアゼルは、昨日でかけていた分の仕事も纏めて終わらせてきたらしい。

 ユリスはアゼルの前に照れ照れと紅茶の入ったカップを置いて、向かい側に座る。

 俺は隣にアゼルがいることが馴染み深く、ホッとして、俺の反応を待っているアゼルの髪を優しくなでた。

「頑張ったんだな、凄い。お疲れ様」
「ま、まぁ、俺にかかればあのくらい余裕だぜ。お前と一緒にやるのが一番早ぇけど、俺にできないことはないからな」
「ん、だが無理をしてはイケないぞ。確かに二人で事務仕事を熟していた時は早く終わっていたから、一人で大変な時は頼ってくれ」
「むっ俺に大変な時はねぇ。……でも、そういうのは、う、嬉しいぜ」

 アゼルはゴニョゴニョと言いながら俺の肩口に頭を置き、スリスリと頬ずりをして甘えてきた。

 髪をなでていた手を離して、喉奥で笑う。

「シャル、開幕イチャイチャ禁止」
「ハッ!」

 しかしユリスのジト目に一瞬場所を忘れていたことに気がついて、気まずさを隠しきれず目をそらす俺である。

 その、だってな、俺の旦那さんはかわいいんだ……!
 俺はかわいがりたい性分なんだ……!

 内心で言い訳をしてみたが、それを見越しているのかユリスは「独り身の目の前は自重して」と言葉を続けた。

 そして俺に言ってアゼルに抗議しないのは、アイドル贔屓だと思う。


「魔王様はシャルを迎えにいらしたんですか?」
「いや、それもあるけどもう一つあんだ」

 来訪の理由を尋ねられたアゼルは、名残惜しそうに肩口から頭を離して、難しい顔でユリスを見つめる。

 ん? どうしたんだろうか。
 特になにも聞いていないので、俺にもよくわからないぞ。

 その原因がそこにあるのか、チラチラと扉を伺いつつ、アゼルはコホンと咳払いを一つして目的を話し始めた。



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