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後話 まだまだ、受難体質大河勝流
11(sideリューオ)
しおりを挟む俺は思ったことを口にすることに、躊躇はない。
めんどくせェし、相手もそうしてくれればいいと思う。
元々ノリが軽いので、それで問題はなかった。相手は嫌なら嫌って言えばいいし。
もちろん言いたくても言えないって、難儀な性分のやつらもいる。それは知ってるぜ。
でも、ユリスはそんなタイプじゃないと思う。
普段からズケズケと俺に物を言うユリスを思ってそう言うと、魔王は首を横に振って、俺のデコに強烈なデコピンをした。
バチィンッ!
「だッッ!?!?」
「手加減したぞ」
「~~~~~ッ! あのさ、たまに忘れてやがるけどよォ、俺人間なんだわァ……!」
魔族感覚でやると思っていたより威力があったのか、すごい音がして首がのけぞった。
マジでコイツ、シャル以外への気遣いが雑だな。
俺が鍛えあげた勇者スペックじゃなければ、どうなってたんだオイ。
「よく聞けよ、馬鹿勇者。好きになったからって、そう簡単に気持ちを言えるもんじゃねぇんだよ。ましてや嫉妬したとか独占欲感じたとか、まず自分の中で整理するのに必死なわけ。人の気持ちは見えねぇから、その先の拒絶が怖いんだよ。わかるか」
「まぁ、わかる。けど俺はいつも好きだっつってんだろ? ビビることねぇよ。……俺はあぁやって笑顔で気持ち隠されるほうが、嫌だ。いつもみたいに怒鳴って怒ってほしい」
「言葉だけが真実かどうかなんてわからねぇよ。それにお前のことをよく知らないっての、気にしてるらしいしな。なにも知らねぇんだな、って気付いて悶々としてる時に他の女といるとこみて、それが嫌な自分に気付いて。そしたら力任せにキレちまうのが嫌で、会いたくないに決まってるぜ」
流石なのか、自分が素直じゃない自覚のある魔王の言葉は説得力があるし、珍しく的を得ていた。
それじゃあユリスは俺に八つ当たりをしたくないから、追い出したって言うのか?
自分でもどうしたいのかわかんねぇなんて、行動派のユリスらしくない。
……だけど、アイツが俺のことをよく知らなくて怖くなるってんなら、俺のほうがアイツのことをよく知らないのかもしんねぇ。
言っている言葉だけが本当じゃない。
そういう奴だってわかっていたのに、それはつもりだったのか。
「ユリスは本人がそうしようと思ってなくても、ついツンケンしてしまうんだぜ? 本当の言葉をありのままは言えねぇんだよ。なら、相手も本当の言葉を言ってないんじゃって、疑ってしまうに決まってんだ」
「それって俺が信用ならねぇってことか? なら魔王はどうしてシャルのことを信じてんだ? その理屈だとアイツの愛してるを疑うんだろ?」
「面倒くさい男だなお前」
「普段散々ノロケ聞いてやってんだから生きるか死ぬかの時ぐらい長話させろや」
さっと手を上げられたので、デコピンされる前にデコを隠す。
こちとらいつも戦いながら愚痴愚痴言うのを、死にかけつつ聞いてやってるんだ。
ソファーで話くらい聞けコノヤロー。
「仕方ねぇな…………で、俺がシャルを信じる理由だったか」
俺の文句を聞いてやれやれとでも言いたげな魔王だったが、やけに素直に話す気になった。
不遜な態度でふんぞり返ってドヤ顔をし、ニヤニヤとにやけだす魔王。
あっ、察した。
コイツ、俺が振ったからとは言え、シャルのことを考えて頭の中それで満ち足りてやがる。
なぁこれ、余計なスイッチ押しちまったぞ俺。
長いやつだこれ。止まんねぇやつだこれ。めんどくせぇやつだ。
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