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後話 受難体質大河勝流

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 ガドは何度言ってもほとんどいつも窓から突然現れる、窓侵入者だ。

 どこであろうがなでられたくなればそう強請り、スキンシップだと笑いながら遠心力をかけてくる。

 ガドがアゼルを大事にしていることは、知っていた。

 大事な命の恩人の、大事な人ということで、懐いてくれているのだろうな。自惚れでもなくわかる。

 ガドは俺を大事な友達だと言ってくれたから。嘘はつかない。

 まぁちょっと友達にしては、過保護とボディタッチが過ぎるが。

 アゼルが弟のように思うなら、ガドはアゼルを兄のように、家族のように思っているのだろう。

(あぁ、なるほど。あれはそういう意味だったのか)

 ふとガドとの出会いを思い出して、口元を緩ませた。

「アゼルはガドに愛されているな」
「おい待て、今の話のどこでそう思ったんだよ」

 ムッとしてわけがわからないと言いたげな表情をするアゼルに、俺の笑いが増した。

 悪意に敏感なくせに、好意には鈍いな。
 そういうところも好きだが、もっと愛されている自信を持てばいいのにな。

「ふふふ、お前は自分への好意に鈍すぎる。いや、怖がりすぎるのかもだ」
「なっ、あぁっ? フン、それで言うならお前は、自分への悪意に鈍すぎるぜ。怒りってもんを知らねぇのか」
「ん、ん? 俺はよく怒る……じゃなくて、馬鹿にしているわけじゃないぞ。ガドがお前のことを愛しているんだなと、思い出した」
「ハッ?」

 鋭い目が丸くなり、キョトンとした。

 今度は俺が悪戯めいた微笑みを浮かべ、出会ったあの日の見解を語る。

 まだ魔界に来て、二週間しか経っていない頃だな。

 アゼルがどこかへ出かけた隙を見て、ガドは俺の部屋にやってきた。

 魔王がとらえた美味しい異世界人を見に来たんだと言ってな?

 俺がどんなやつか確認しに来たんだろう。
 お前を害するやつだと困るからだ。

 触られまくってジロジロ見られて、あの時は変な竜人だと思ったが……今の話を聞くと警戒していたようだな。

 その理由を考えると、やはりそれはアゼルが大事ってことじゃないか。
 かわいらしい家族愛である。

「気づいてみるといじらしいだろう? お前にバレないように、機を見ていたんだ」
「……………」
「? どうした?」

 にこにこと昔話をした俺に対して、アゼルは目を瞑って眉間にシワを寄せる。

 更に非常に険しいへの字口で悩んでいた。どうした。

「………………うん。別にあの時は、こうじゃなかったから、許す」
「どういう脳内会議をしたのかわからないが、許すって顔じゃないぞ」

 絞り出すように発した言葉と顔が一致していない。
 微妙に照れているのもまたミスマッチだ。

「まぁ、アイツはあぁ見えて心配性だからな」

 ふぅ、と息を吐いたアゼルは、俺をしっかりと抱きしめなおしてぬくもりを確かめた。

 今日はいろいろあったからな。
 後半はいろいろあったのは俺オンリーだが。



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