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後話 受難体質大河勝流

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 温かな湯船で赤く染まった熱い頬に押し当てた唇を、薄く開いて肌を食む。

「ん」

 擽ったそうに片目を閉じたが、アゼルは好きなようにさせてくれた。

 そのうちに中をゆっくりと丁寧に解いていた指が、グゥと突き入れたまま拡げる。
 指はイタズラにお湯を招き入れ、ズルリと出ていった。

 腰を抱かれ膝立ちになると、肋の凹凸をベロリと舐められ力が抜けてしまう。

「ぅあ……っ」
「気持ちいいのが好きなんだろ?」

 肌が粟立つ感覚を収める前に、代わりにあてがわれた怒張が、急いた様子でグチ、と先端を潜り込ませた。

 キュゥ……っ、と期待に収縮する後孔が、くびれを締め付ける。

 それを咎めるように、胸元に吸い付いた唇が鬱血痕をつけてしまうのだ。

 舐められ、噛まれ、吸われ。
 ビクンッと背を撓らせて仰け反った途端引き寄せられ、一息に根本まで突き刺ささった。

「ふ、あぁ……っ! ア、っそう、好き、ん……っ」
「っつ、締めすぎ、だろ、馬鹿、っ」
「あっ、ン、ぁっ、あっ」

 俺の体を掴んで軽々と揺さぶるアゼルに、されるがままの俺はかぶりを振って乱れるしかない。

 胎内にピタリと馴染む杭が穿つたび、凹凸が壁をひっかき弱いところをゴリッと抉る。

 コレの形をもうすっかり覚えている。
 どこがどう擦れて気持ちいいのか、目を閉じていても反芻できるほどだ。

 あぁ、好きだ。
 隅々まで満たされる。

 熱くなってずいぶん馬鹿げた遊びをしたが、欲しかったものが与えられて全身で歓喜してしまう。

「お前が、お前だから、っ、あ、いい……っ好きだ、アゼル、が、一番……っ」
「うっ……! くそ、俺だって、っ」

 頭がだめになってしまい切る前に言いたくて、懸命に愛を告げた。

 それに応えるようにアゼルが動き、激しく突き崩される。

 チャプチャプと揺れるお湯の音を聞きながら、理性の飛んだ俺はイイ、もっと、とすっかり夢中で快感に浸った。

 その後は──もう。

 俺が堪えきれずに達してもアゼルは休息を許さず責め立て、穿ち、何度も奥に注ぎ込む。

 我慢していたのは俺だけじゃない。
 アゼルの理性はおぼろ豆腐なみの柔らかさなのだ。

 意地悪をしてみせたのは、他にフラフラと懐かせないため。

 黙りこくって理性と戦っていたのは、誘えばいつもどうにかなるなんて思わせないため。

 グズグズに蕩けた体をまだ足りないと犯されながら、今回は俺の完敗だな、とふやけた思考で実感して笑う。

 俺は男が恋愛対象ではない。
 だがアゼルは他の人と二人きりで出掛けられるのが、本当は嬉しくなかったのだろう。

 ちゃんと許可を取ったとはいえ、その感情を譲ってくれたのだ。

 いつも恋心は鈍くて見抜けず、不安にさせてしまったことを反省する。

『あいしてる、いちばん、おまえだけ』

 俺は噛み付いてくる頭を抱きながら、たっぷりとそんな愛の言葉を、喘ぎ混じりに吐き出した。

 自分が抱いている俺の様子を見れば、触れられただけでこんなにおかしくなるほど熱くなっているのが、一目瞭然だろうに。

 まったく。独占欲が強くて嫉妬深いアゼルは、自分ばかり愛していると思っているが……そこのところは鈍いな。

 俺が、誰をデートに誘うために、出かけたのか。

 それを忘れているらしいアゼルは、やっぱり鈍ちんだ。

 だがそれでもアゼルが愛しくてたまらない自分に、一番呆れて笑ってしまった。

 たまにはこんな戦いもいいと思う。
 そんな俺たちらしい、時間だった。



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