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後話 受難体質大河勝流
07※
しおりを挟む頭まで沈んでいるアゼルの踵や踝、爪先を指先でしばらくなでたり突いたりしてみる。
暗に早く出てきてほしいと伝えているのだが、頑ななアゼルは籠城作戦に出ているようだ。
指先でとはいえ、触れてしまうともっと欲しくなるな……困った。
湯に沈んでいるのは俺をからかっているのか、もうあとひと押しなのかわからないが、このままではまた逆上せてしまう。
「は……駄目だ、足りない、」
俺はギュッと膝を抱きしめて、水の中には聞こえないかもしれないが、独り言を言った。
「鬼の俺は今日だけなのに、我慢するなんてもったいないと思わないか?」
「!」
お強請りを禁止された俺は、膝小僧に頬を当てて自分を売り込む。
「お前が俺をその気にさせたのだから、据膳食わぬは男の恥だ。……お嫁さんを抱くのは、旦那さんの仕事だろう……?」
するとブクブクと沈んでいたアゼルが水飛沫を上げ、ザバッ! と勢い良く浮かび上がった。
嫁さん対決に折れたからだろうか。
一本釣りされた魔王様は、潜っていたので真っ赤に茹でられ、全身紅潮しながら俺を睨みつけた。
「~~~っこ、これはなぁ、お仕置きなんだぜ……! わかってんのかお前、バカ、変態、堪え性なしがっ」
「ぅひっ」
言葉とは裏腹にムギュッと強く抱きしめられ、俺は濡れた素肌が触れあう感覚に反応する。
スリスリと擦り寄るアゼルに髪の香りを嗅がれて、額の角を舐められた。
その動きにいちいち喘いで反応すると、アゼルは余計にむくれて文句を言う。
お仕置き、は発端で、お前はとても楽しそうに遊んでいたじゃないか。
今思い出しただろう、その理由。
「だから、折れたじゃないか、あっ、っ……もう解禁だろう……っ? 俺のことすきに、イジメたくせに……ん、!」
「ぐぅぅ……! いつも思うけどそういう言い回しやめろ、なんかクるだろうがッ」
「ひっぁ、あっイイ……っ」
アゼルは首に腕を回しぐたりともたれかかり喘ぐ俺の背骨を、グリンッと下から肩甲骨まで、指の関節で強くなぞりあげる。
もう片方の手には、湯の中でゆらゆらと揺らめいていた腰のバスタオルごしに、形をなぞる様に屹立を擦られた。
「はっ、ンっう、うぅ、ぁ」
俺は待ち望んだ男からの刺激に、羞恥心が掠れていたぐらいには崩壊していた理性が、完全に飛び去る。
お前に触られて、そうそう我慢ができるわけないだろう?
俺だってそういう男なんだ。
俺は好きの気持ちは、ちっとも我慢できない。
触れられなかっただけ感じていた物足りなさが、満ちていく。
目の前に無防備に晒されたアゼルの鎖骨に、鬼化して尖った牙を突き立て、カリッと甘噛みした。
「ぁう、む」
「んっ」
俺の体を愛撫しながら角を舐めていたアゼルが、突然噛まれて声を漏らす。
それがいつもと立ち位置が逆のようでかわいくて、俺はカミカミとそのまま甘噛みを続けた。
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