本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
上 下
398 / 901
後話 受難体質大河勝流

07※

しおりを挟む


 頭まで沈んでいるアゼルの踵や踝、爪先を指先でしばらくなでたり突いたりしてみる。

 暗に早く出てきてほしいと伝えているのだが、頑ななアゼルは籠城作戦に出ているようだ。

 指先でとはいえ、触れてしまうともっと欲しくなるな……困った。

 湯に沈んでいるのは俺をからかっているのか、もうあとひと押しなのかわからないが、このままではまた逆上せてしまう。

「は……駄目だ、足りない、」

 俺はギュッと膝を抱きしめて、水の中には聞こえないかもしれないが、独り言を言った。

「鬼の俺は今日だけなのに、我慢するなんてもったいないと思わないか?」
「!」

 お強請りを禁止された俺は、膝小僧に頬を当てて自分を売り込む。

「お前が俺をその気にさせたのだから、据膳食わぬは男の恥だ。……お嫁さんを抱くのは、旦那さんの仕事だろう……?」

 するとブクブクと沈んでいたアゼルが水飛沫を上げ、ザバッ! と勢い良く浮かび上がった。

 嫁さん対決に折れたからだろうか。

 一本釣りされた魔王様は、潜っていたので真っ赤に茹でられ、全身紅潮しながら俺を睨みつけた。

「~~~っこ、これはなぁ、お仕置きなんだぜ……! わかってんのかお前、バカ、変態、堪え性なしがっ」
「ぅひっ」

 言葉とは裏腹にムギュッと強く抱きしめられ、俺は濡れた素肌が触れあう感覚に反応する。

 スリスリと擦り寄るアゼルに髪の香りを嗅がれて、額の角を舐められた。

 その動きにいちいち喘いで反応すると、アゼルは余計にむくれて文句を言う。

 お仕置き、は発端で、お前はとても楽しそうに遊んでいたじゃないか。
 今思い出しただろう、その理由。

「だから、折れたじゃないか、あっ、っ……もう解禁だろう……っ? 俺のことすきに、イジメたくせに……ん、!」
「ぐぅぅ……! いつも思うけどそういう言い回しやめろ、なんかクるだろうがッ」
「ひっぁ、あっイイ……っ」

 アゼルは首に腕を回しぐたりともたれかかり喘ぐ俺の背骨を、グリンッと下から肩甲骨まで、指の関節で強くなぞりあげる。

 もう片方の手には、湯の中でゆらゆらと揺らめいていた腰のバスタオルごしに、形をなぞる様に屹立を擦られた。 

「はっ、ンっう、うぅ、ぁ」

 俺は待ち望んだ男からの刺激に、羞恥心が掠れていたぐらいには崩壊していた理性が、完全に飛び去る。

 お前に触られて、そうそう我慢ができるわけないだろう?

 俺だってそういう男なんだ。
 俺は好きの気持ちは、ちっとも我慢できない。

 触れられなかっただけ感じていた物足りなさが、満ちていく。

 目の前に無防備に晒されたアゼルの鎖骨に、鬼化して尖った牙を突き立て、カリッと甘噛みした。

「ぁう、む」
「んっ」

 俺の体を愛撫しながら角を舐めていたアゼルが、突然噛まれて声を漏らす。

 それがいつもと立ち位置が逆のようでかわいくて、俺はカミカミとそのまま甘噛みを続けた。



しおりを挟む
感想 215

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

処理中です...