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後話 受難体質大河勝流
04
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脱衣所にやってくると、先手必勝とばかりにアゼルが俺に抱きついた。
そして俺の熱が引かないうちに背後から首筋に噛み付いて、チート、もとい吸血をし始めたのだ。
流れ込む催淫毒に、触れると過敏に反応するくらいだった高まりが、またグッと盛り返す。
肌を食い破ってチュルチュルと血を吸われる感覚に、俺は早くも膝から崩れ落ちそうだ。
ピチャ、と傷口を舐めてからアゼルの体が離れるが、温もりは収まらない。
あぁくそう、キスしたい。
ニヤニヤと楽しそうなその唇を塞いでやりたい。
火照って熱い頬を自分の手の甲で押さえつつそう思うくらいには、俺は既に興奮していた。早くも敗色濃厚か。
「う……開き直ったら勝ちだ」
ウキウキしながらさっさとアクセサリーを外し、服を脱いで脱衣かごに入れているアゼルを横目に、己に言い聞かせながら服を脱ぐ。
躊躇したら負けだ。
無我の境地を目指さなければ。
衣服が擦れないように注意して時折呻きつつも、どうにかこうにか服を脱ぐ。
そうしていると、肌に強い視線を感じた。
「あのな、ガン見はやめてくれ……っ」
「クックック、今更なに言いやがる。一緒に風呂に入るなんてイベント、いつもやってるじゃねぇか。クックック……!」
楽しそうだな、本当にお前は。
一足先に準備を終えたアゼルが腰にバスタオルを巻き、腕を組んで壁にもたれながら、俺が苦戦しているのを鑑賞していた。
未だにベルトを外しベストを脱ぎ終わっただけの俺と違い、アゼルは惜しげもなく彫刻のような肉体美を晒している。
前哨戦がすでに開始しているとみた俺は、余裕のアゼルに打って出ることにした。
シャツの裾を掴んで、ガバッ! っと一気に脱ぎさる。
「く、っ、! んんん……っ!」
「ンな、」
まさかの守りを捨てた短期決戦に、アゼルが驚いたのかサッと顔をそらした。
それにニヤリとして、俺は次いで下の衣服も勢いで片付ける。
ふっふっふ、アゼルは押しに弱い。
こっちが恥ずかしがっているとハツラツとし始めるが、堂々とすれば逆に恥ずかしがるやつだ。
こすれる布地に何度かビクッと震えつつも、俺は敢えて一気に動く。
「はっ、ンっ、っ」
「おっお前変態か! そっとやれそっと! 不健全な顔になってる!」
「うぁ……ッ、フッ、一緒に風呂に入ろうと、服を脱いでいるだけだが……? ンン……!」
「ぐるるる……!」
唸るアゼルに対し、勝ち誇る俺。形勢逆転。
変な汗が出てきているが、ニヤニヤとしながら全裸になり、しっかりとバスタオルを腰に巻いた。
でなければまずいのだ。
捨て身の代償がな。
はぁはぁと荒い呼吸を抑えつつ、俺はアゼルの腰に誘うように腕を回して、飛びそうな理性に鍵をかけ直しニヤリと笑う。
「さぁ、洗いっこの時間だぞ、ハニー……!」
「お、お触り禁止だ!!」
無意識になでてしまったから、やっぱりちょっと理性は飛んでるかもしれない。
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