390 / 901
七皿目 ストーキング・デート
31(sideリューオ)
しおりを挟む裏口から飛び出してきたアゼルだが、お散歩形態だった彼がなぜこうなっているのか。
それは、次の公演のトップを飾った後追いかけそびれたことに気がつき、焦りのあまり形態変化が中途半端に解けた状態になっていたのだ。
そうとは知らず、巻き添えでストーキングされていたリューオ。
奇跡かよ! と思わぬ助っ人に喜び、細かいことは気にせず巻き込むことにした。
ズカズカと鬼気迫る勢いでこっちに向かって歩いてくるアゼルに、心の底から感謝する。
現金な勇者である。
そして魔力を抑えた妙ちきりん男と言えども、顔だけはすこぶるイイのが魔王。
イケメンを見た少女は、きゃあ! と女の子らしい声を上げて大興奮だ。
「あっやだすごいかっこいい……! 顔が小さい! 手足が長い! 目つきがエロイ! 隣に立たせたくないのに立ってほしいタイプの美形!」
「オイやめとけや、コイツ中身地雷だぜ。変態で収集癖のスキル持ちで、独占欲と執着が異常な愛ヘビィ級チャンピオンだかンな」
「またまたイケメンがそんなわけないじゃないですか。って、ハッ!? オーガさんやっぱり私を!?」
「このバァァァァァァカッッ!!」
しかし、それを善意で引き止めたリューオの言葉を前向きに捉えたことで、盛大なバカに塗り替えられる。
せっかく人が善意で地雷、いや世界滅亡級爆弾だと教えてやったのに、どうしようもない女だ。
魔族は寝取りオッケーの横恋慕上等な種族なので、彼女が特別どうしようもないわけでもない。
だがリューオはここで、きっぱり縁を切らねばならなかった。
誤解に誤解を重ねる展開を避けるためだ。
「このクソッ」
「ちょっと、」
「あ?」
ところ変わって、シャルから目を離したリューオに一言文句をと思ったアゼル。
だが突然、グイッとリューオに腕を引かれ、無理矢理引き寄せられた。
意味がわからない。
されるがままに肩に腕を回され、まるで仲が良いように体を密着させられる。
意味がわからない。
そしてスゥ、と深く息を吸い込んだリューオは、ギロンと素で睨みつけ、ガオウッ! と虎よろしく吠えた。
「いいかオイ? 俺は──男が大好きなガチホモなんだわ。だからテメェとは、天地がひっくり返っても付き合わねェッ! あきらめろッ!」
「「え?」」
だから、意味がわからないと言うに。
少女とアゼルのマヌケな声が、ぴったりと重なった。
どうしようもないだろう理由を作ったリューオは、ドドンッ! と効果音でも背負いそうな様子でとんでもないことを言い切る。
ちなみにリューオはバイであるので、本当のところは女性も守備範囲だ。
むしろ女性好き寄りのバイだ。
そして言葉を理解した少女が神妙な顔で頷いたことで、状況がわからないのはアゼルオンリーであった。
魔界の最高権力者が型なしである。
やはり勇者は唯一無二の魔王の天敵なのだろうか。
41
お気に入りに追加
2,693
あなたにおすすめの小説



鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる