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七皿目 ストーキング・デート

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 ──結局。

 食べ終わるまで終始無言でこちらを見つめていたゼオは、ランチの会計を俺の分まで済ませてしまった。

 まさか付き合ってくれたお礼にと、俺が金貨を取り出すより早く支払われるとは。

 まだまだ修行が足りないようだ。
 財布を出す速度を極めなければ。

 だけどそれでは俺の気が収まらない。

 支払いを済ませてさっさと店を出たゼオを尻目に、店で出していた紅茶のお持ち帰りを買い、自己満足だからとゼオに押し付けた。

 読書タイムで、よく紅茶を飲むと聞いていたのだ。雑談の内容が役に立った。

 そうするとゼオは「貢がせたみたいで気分が悪いです」と、無表情から露骨に嫌そうにする。

 俺はいつぞやのザラ紙のメモに〝気持ちの落とし物です。私の為に受け取ってください〟と書いて、紅茶の紙袋に貼り付けた。

 流石にずっと無表情だったのにわかりやすく変化させられると、わざとだとわかる。

 笑いながらそう言うと、ゼオは静かにため息を吐いた。

「……既婚者か……」



 そうして進む、デートの下見。

 このあたりの奇術館以外のデート向けのスポットを教えてもらいながら、しばらく雑談をしつつ、二人で街を歩く。

 買い物のできる場所はどこがオススメか聞くと、衣服店やら雑貨屋などが立ち並ぶ通りに連れてきてくれた。

 アゼルはオシャレだから、アクセサリーショップには行きたいな。

 それから魔族が大好きな紅茶専門店。あそこにティーカップが売っている。

 そして魔界のペットショップ。
 あれは俺が気になる。一緒に行ってみたい。

 キョロキョロしながら通りを歩く俺を、ゼオは咎めずに、隣で歩いてくれた。

 あれこれと質問すると、ちゃんと答えてくれる。冷たいようで、そうじゃない。

 時にはゼオが寄りたいお店にも俺はついて行って、興味深く眺めた。

 不思議なものを買うんだな。魔物捕獲用の罠なんて、どうするんだろう。

 用途を尋ねると「脱走する変態アンデッドを捕獲するんです」と返ってきた。

 よくわからないが、アンデッド退治でもするのか?

 倒しても生き返ることが多いので、アンデットは大変だな。

 トラバサミをいくつも召喚魔法域に保管する姿を眺めていた俺は、ふと通りすがった一つのお店の前で、足を止めた。

「ここを見てもいいか?」
「ん、花屋ですか」

 軽く頷く。

 ゼオの許可を取り比較的かわいらしいウッド調のお店に入ると、中にはたくさんの花や植物が並んでいた。

 檻に入れられた人食いのものもあるが、一般的な観賞用の花もある。

「あった。これだ」

 俺は通りから見えた一つの花に近寄り、身をかがめて、なんとなく嬉しい気持ちでそれを見つめた。

 まだ蕾のそれは、咲いてはいない。

 だけど薄い桃色のグラデーションをした花弁が美しい、百合のような細身の花。

 それほど背丈はない。
 二十センチほどで、その半分が花だった。

 花は大きいのに茎は細くて、よく見ると風で折れそうなか弱さがある。

 珍しい花なのか、お値段は一本金貨一枚と高貴な代物だった。

「それは、シャリディアスですね」
「ゼオ」

 声をかけられ、振り返る。

 こういうところにはあまり来ないのか一人で店を見ていたゼオが、いつの間にか後ろにいた。



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