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閑話 男気番長は抱かれたい

03※

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 アゼルが文句をつけるより先に、色気もへったくれもなく残っていた下衣と下着を脱いだシャルが、躊躇なく腰にまたがった。

 それはつまり、全裸だ。

「ちょ、ま、まてっ」

 当たっている。
 とてもダイレクトに当たっている。

 むき出しの股間が素肌に触れ、なんとも言えないリアルを醸し出していた。

 引き締まったハリのある太ももがアゼルの腰を挟み、小ぶりの尻が上衣を捲くられた腹筋に乗っている。

 アゼルは動くなと言っておきながら恥じらいもなく肌を合わせてくるこの男が、自分の理性を試しているのかと真剣に疑った。

 今すぐこのまま手を伸ばして腰を抱き、腿をなでて、中に指を挿れたい衝動をどうにか押さえる。

 それを尻目にシャルは無地の雑誌を取り出して、真剣にページを見つめ始めた。

 雑誌のページには、男を躾ける夜の主導権の握り方なるものが書かれている。

 もちろんそれは、アゼルの知るところではない。

 番長はただ、一方的な口淫が物足りなさそうなアゼルに、他のこともやってみようと思っただけなのだ。

 これは純然たる男気。

 自分の男をめいいっぱい愉しませ、あわよくば自分も気持ちよくなろうという、愛である。

 逆効果極まりない。
 今すぐ押し倒したくなるだけだ。

「シャル、も……いいだろ?」

 ソワソワと落ち着かないアゼルが、シーツの上で所在なさげに手を動かし、シャルを見つめる。

「ふむふむ……そうだな」

 シャルは雑誌をそっと傍に置いて、跨ったまま上体を倒し、その子犬のような男の横に手をついた。

 ふかふかの枕に両手が沈んで、息がかかるほど顔を近づける。

 鼻先を触れ合わせて、唇の端にキス。
 それから上唇、鼻の頭、顎の先端。

「っ……」

 なかなか本命に口付けてくれないことに焦らされ首を動かそうとするアゼルに、ふっと身を引く。

(ええと……雑誌によると〝たっぷり焦らしてあげると、満たされた時がよりたまらない〟だったな……)

 手順を思い出し、アゼルの服のボタンを外しながら真っ赤に染まった耳朶を舐めた。

 焦らす、焦らす……我慢か。よし。


「上手にマテができたら、後でご褒美をあげるからな」


 それは、祖母の家の犬を思い出して口にしただけの言葉だ。

 だがそのなんの気ない言葉は、夜色の毛並みの犬にも、効果は覿面だった。



「ん、ン」

 腰を上げて、熱く窮屈な内部に右の指を突き入れながら、勃起した肉棒を硬い腹筋に擦り付けた。

 魔法のなりそこないを潤滑油替わりにした後孔は、指で掻き回すとグチュ、と粘着質な音を立てる。

 左手はアゼルのつけっぱなしのピアスのついた耳を指で捏ね、もう片方の耳はもうずっと舌で嬲った。

 舐られ過ぎた耳朶は唾液と絡み、しっとりとふやけている。

「く…ぅ……、うう……ッ」

 マテができればご褒美。

 それを支えに、様々な淫らな誘いを耐えていた。焦らされ続けているせいか、悩ましげな呻き声を上げてしまう。

 はだけた胸にぐたりと身体を重ねたまま擦り寄ると、胸の突起が擦れて「ンッ」と嬌声を漏らした。

 煽っているつもりだが、自分が気持ち良くなっているらしい。

 無意識に汗ばむ体を擦り付け、胸の間で潰れる快感を追い求めている。

 そんな光景は全て、アゼルを追い詰めるショーケースの据え膳でしかなかった。

 ご褒美に唆されてしまったのは早計だ。
 最早アゼルは、煽り耐性ゼロの自分の限界と戦っている。


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