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閑話 男気番長は抱かれたい
01
しおりを挟む毎日隣にいるだけで幸せ。
抱き合ってキスをするだけで愛おしい。
笑っていれば嬉しいし、泣いていれば悲しい。
一緒にいない時でも、ふとした時に相手を思い浮かべる。
そんな甘く穏やかな結婚生活。
──なんて。
まだまだ若い身体を持つ男二人が、熟年夫婦のような添い遂げるだけの日々を送っているわけがない。
いかな天然男とツンデレ男と言え、情欲は沸き立ち、ふしだらな夜を繰り返す。
淫靡な時間を求め合い、恋人時代から幾度となく身体を重ねてきた。
胸の内まで曝け出し合う相手で、同じ男。
好きな相手に欲情することなんて、男なら当然のことだ。
ましてや結婚までしているからには、遠慮なんてない。
初夜でもないので羞恥もほとんどない。
そう考えているシャルはさあ寝ようかと明かりを消して、二人で眠るには広いベッドにもそもそと乗り上げるアゼルをふむと見つめる。
魔界の明るい月明かりに照らされた室内は、大方のものがよく見える。
ベッドサイドに立ったままでなかなか隣にやってこない自分を、黒い瞳がこないのか、と待ちわびていた。
うん、かわいい。
大多数がそうは思わないどこをどうしても男であるアゼルを、自然かわいがりつつ、ベッドに上がる。
そうしてシャルはおもむろに上衣のボタンを外し、いつもの調子で提案した。
「アゼル、しよう」
「ぅえっ」
プチプチとボタンを外しつつ、なんの話のモーションもなく放たれた言葉。
予想だにしていなかったアゼルは、動揺を隠しきれない。
そんなことを気にした様子もなく、シャルはバッと上衣を脱ぎ捨て、手早く軽く畳んでベッドの端に置いた。
こいつ、できる。
「練習したい。練習は日々の積み重ねだ。一度にして習得ならずだろう?」
シャルはギシギシとベッドを鳴らし、四つん這いでアゼルに詰め寄る。
もしこの場にリューオがいたならば、「部活かよッ!」と後頭部をスパンと叩いてくれただろう。
だが、ツッコミ勇者はここにはいない。
予想していなかったから驚いたが、アゼルも満更でもなかった。
上裸でのしかかってくる嫁に、抵抗はしない。
想いが通じた初夜のあの恥じらいは、いったいどこへやら。
アゼルとの結婚生活に慣れたシャルは、性行為になんら躊躇しなくなっている。
してほしいことはいつも、この様にわかりやすくストレートに求めてきた。
いつも態度と空気でふわっとコトをなしてきたアゼルより、正直ずっと男らしい男だ。
格好良すぎていつも「好き! 抱かせて!」となってしまう。
種族関係なく誰もが美しいと感じる、わかりやすく派手な美形であるアゼルより、シャルは男臭い容姿である。
その彼を抱かれたいではなく抱きたいと思うあたりが、嫁至上主義フィルターの調子は良好らしい。
元々の骨ばった、無骨な体。
顔だけでなく男らしいシャルの体だ。
涙ぐましいトレーニングの積み重ねによって、身長に対して細身ではあるが靭やかな筋肉を手に入れていた。
本人のコンプレックスであるとおり、どう首をひねってもかわいくはない。
高位の魔族が犇めく魔王城では、すこぶるとは言えないものの、顔立ちも精悍に整っている。
しかし美しいと形容するより、端正と言うべきだ。
中身はぼんやりとしたハムスターだが、見た目は鯱だろう。
それでも、アゼルにとってはかわいいの代名詞として、不動に君臨しているのである。
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