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六皿目 純情変態桃色魔王
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しおりを挟む俺はソファーの背もたれにトンと肩を預け、クククと喉を鳴らし、数カ月前の出来事を思い出しながら語った。
「以前リューオに、俺がアゼルを唯一と愛しているのはすりこみではないか? と言われたことがある。仲間もいないまま魔界にやってきた俺が、最初に優しくされた人だから」
「へぇ?」
「誰でもいいんじゃないかと。それこそか弱い少女にでも一緒にいようと言われていたら、即落ちだっただろう。否定はしきれない」
「…………」
「うひひ。そう気落ちすんなよ魔、んんマオ~」
「……クゥン……」
後ろからしょんぼりとした声が聞こえて振り向くと、犬は甘えたそうにしょげている。
俺はヨイショと座り直し、耳をぺたりと倒した犬をなでた。
お前の名前はマオと言うのか。
優しく「おいで」と言うと、マオは俺の膝の上に大きな体を寝そべらせ、少しだけのしかかる。
そんなマオのふかふかの体をなでつつ、俺はちっちっち、と人差し指を立ててコミカルに左右に振った。
「寂しくて悲しい時に優しくされたから、好きになった。そういう理由かもしれない。でもな、優しくしてくれたのはアゼルなんだ。他の誰もしてくれなかったことは、アイツが初めて俺にしてくれたんだ」
他の誰かがやったら俺はその人を好きになっただろうって、それはそうだが他の誰かなんていなかったじゃないか。
きっかけに過ぎないそんな経緯も、この世でアゼルだけが持つ経緯だ。
それにアゼルは、俺のことをあれからずっと大事にしてくれている。
釣った魚に餌を、と言うあれだ。
気まぐれやなりゆきではないからこそ、俺はアイツを愛してしまい、それを本物にできたのだろう。
「以上の理由から、他に恋することはないし、どうしたって愛情込みなので……俺の好みのタイプはアゼルです。ご清聴ありがとうだな」
「…………」
「アハハッ最高ォ~……!」
語り終わった俺をガドが笑って震え、マオは俺の太ももの間に顔を埋めて黙り込んだ。
尻尾が尋常じゃなくふりしきっている。
ソファーをベシベシ叩く音が、ベベべとハイテンポ極まりない。
「ちなみに性癖は?」
「ん? ん……ちょっと痛くてちょっと恥ずかしいのが、結構好きだ」
──後、騎乗位の練習がしたい。
少し考えてそのまま告げると、クツクツとした笑いが爆笑に進化した。
失礼なやつだな。
脇腹に軽くポスンとパンチしたが、いっこうに効いた様子がなかったのが残念だ。
ガドに今更羞恥心もあまり発動しないから、多少のえっちな話もできる。
大人だからな。大人はえっちなのだ。許してくれ。
こうして少し桃色トークを二人と一匹で繰り広げながら、アゼルが帰ってくるのを待つ俺たちであった。
「しかしアゼル、帰りが遅いな」
「くぅん……!」
「クックック……!」
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BL
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