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六皿目 純情変態桃色魔王
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「ふう……なんだか今日は騒がしい日だな……」
執務室から逃げ出した後。
俺は気を落ち着けるべく、無心でクッキーを焼いてから、スッキリとした気持ちで部屋に帰ってきた。
こう、ひたすら生地を捏ねていると思考が落ち着くんだ。
作ったクッキーは少量なので、召喚魔法域に保存しておく。
材料にもよるが大体一週間くらいはもつぞ。
この短時間でちょっと濃い出来事が多すぎた。主にアゼル……と言うかオンリーアゼルだな。
アゼルがいつも帰ってくる時間まではまだ少しあったので、俺は一人部屋で軽くストレッチをし、のんびり読書をすることにした。
フカフカのソファーに腰掛け、前に読んだ時はまだ途中だった本を開き、どこまで読んだかとページを捲る。
「ん?」
そうして読書を始めて幾分もしないうちに、扉の外からカリカリとなにかをひっかくような音が聞こえた。
(んん……誰か来たのか?)
それか今日はアゼルがちょこちょこと現れているから、もしかして三度目があるのかもしれない。
俺は立ち上がり、扉に向かって歩く。
今日の遊びはなにが楽しいのかわからないとは言ったが……アゼルが機嫌よさそうならそれでいいか。
「ふふ。ならば次はどんなオプションがついているのか、だ」
クスリと笑いながら扉に手をかけた。
ノブを回し、ガチャ、と開ける。
「どうし、ん?」
そしてアゼルの姿を想像していた俺は、予想していなかった来訪者に、キョトンと目を丸くした。
「お前は、あの時の犬じゃないか」
俺の言葉に反応してか、来訪者──真っ黒な大きい犬は、つぶらな瞳で俺を見つめて、尻尾を振った。
以前アゼルの命令で俺に桃を届けてくれた、あの犬である。
中庭に専用厨房を作った時のモフモフ大会以来だ。久しぶりに会ったが、元気そうで良かった。
俺はすぐに扉を大きく開き、犬を部屋の中に招き入れた。
部屋に入った犬をにこにこと笑って追いかけ、ソファーに座り直す。
すると犬はずっと口に咥えていたものを、俺にどうぞと渡してきた。
「これは……雑誌か?」
「ウォンッ」
俺の言葉に、犬がひと声あげる。
なにか咥えているのはわかっていたが、どうやら今回はこの雑誌を届けに来たようだ。
相変わらず賢い犬だな……、と感心してよしよしと頭をなでてあげると、途端、揺れていた尻尾の動きが活発になる。
それを見て和みつつも特になにも考えずに雑誌を受け取った俺は、何気なくパラ、と中を開いた。
「…………」
そして黙ってパタンと閉じる。
(ええと、なんでこんなものを、犬が持っているんだ…?)
そしてなぜ不満そうにさっさと読めと言わんばかりに、鼻先で俺の膝をつつくのか。
犬が持ってきた雑誌は、様々なけしからん内容の記述や文章と、各絵師のこだわりが盛り込まれた官能的な挿絵がある──所謂、エロ本だった。
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