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六皿目 純情変態桃色魔王

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 ようやく地に足がついたので、なにかしらプラスアルファして俺にお披露目してくるアゼルに、改めて向き直る。

「シャル、どうだ? 俺になにか言うことがねえか?」

 すると再び先程と同じことを言われた。
 言うこと?

 どうやらなにか言わせたいみたいだが、思い当たるフシがなくて、俺はキョトンとするしかない。

(言うこと、言うこと、……あぁ、そういえば、あれだ)

 悩ましくアゼルを見つめながら、しばらく考えた後。

 ややあって、俺は言いそびれていたことを思い出した。

「さっき言い忘れたが、耳と尻尾が似合っている。とてもかわいい」
「か、かわいい……ハッ!?」

 褒めたつもりで、求められているだろうセリフを言う。

 褒められ待ちだったんだろう? たまにある。
 アゼルは褒められるととても嬉しいタイプの魔王様なのだ。

 けれど今日のアゼルはガーン、と、衝撃を受けたような顔をした。

 むむ、思っていたことと違ったのか。俺は鈍いから、いけないな。

 他にはなにか……と考え直そうとすると、アゼルは俺の両肩をガシッと掴み、真剣な表情でゴクリと唾を飲む。

「お前、やっぱ俺にしたいのか……?」
「? したい? なにをだ?」
「俺がお前にすることだ」

 アゼルがすること。

(……腹にバスタオルを詰めたり、仮面をかぶったりする謎の遊びのことか?)

 そういうことか、と考えが追いつき、俺はすぐに首を横に振った。

 アゼルがしたいのならもちろん付き合うが、好きでやるかというと、遊びとしてはちょっと面白さがわからない。

 申し訳なくて、肩をすくめる。

「いや、実のところ俺の趣味とは合わないから、したくはないな。もうちょっとこう……(遊ぶなら)外でとか……」
「外で……!?」
「ん……でもまあ俺も大人だから、外は見られたら恥ずかしいかな」
「そっ、そうだな、うん。俺は有りだけど、お前が見られるのはだめだ。うん」

 遊びの話を聞きつつ、アゼルは少し赤くなりながら神妙な顔をして頷く。

 そうなんだ。
 流石にいい年した大人の男がキャッキャと外ではしゃぐのは、ちょっと照れくさい。

 大人数なら構わないんだがな。鬼ごっことか、人がいたほうが楽しい。

「何人かですれば「却下」? だめか?」
「当たり前だろアホシャル! いくらお前の頼みでもそれは聞けねぇぞ……ッ!?」
「そんなに嫌か? んんと、それじゃあ室内で二人でするなら……なんだろう。一人遊びは得意なんだが、二人はすぐに思いつかないな」
「ひっ……!? ひとりあそびがとくい……!?」

 話を続けると、俺の何気ない言葉を聞いたアゼルが、突然カッと真っ赤に染まった。

 ええ、と。どうしてそんな羞恥顔になるんだろう。皆目検討がつかな、うん?

(……魔界では、も……もしかして、一人で遊ぶのは恥ずかしいことなのか……?)

 ハッとして口元を覆う。

 魔境生まれのはずのアゼルが驚いているのだから、遊ぶと言えば魔物でも動物でも、他の生き物と一緒に遊ぶのが普通なのかもしれない。

 そんな馬鹿な! と驚くが、でないと辻褄があわないんだ。

 そうじゃないとこの反応はおかしい。
 恐らくアタリじゃないだろうか。

 魔界ルールを知らなかった俺は、恥ずかしくて少し赤くなってしまった。

 捕虜時代は基本一人だったからなにかと一人で過ごすのがうまくなっていたのだが、まさかそんなよろしくないことだったなんて。

「ちょ、ちょっと恥ずかしいことを言ったみたいだ、忘れてくれ。俺は部屋に帰る」

 なんとなく居づらくて、俺は言うだけ言って足早に執務室を後にした。

 ──ちなみにライゼンさんはずっと石化していたので、アゼルが心にしまっておいてくれれば、俺の沽券は守られるはずだ。

 くっ、魔界の常識は難しいし、法律等常識は日々変化しているんだった……!



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