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六皿目 純情変態桃色魔王
13(sideアゼル)
しおりを挟むマルガンはその手法で仲良くなった女を挨拶代わりに抱き上げては「美貌の天使かと思って、思わず俺っちの腕の中に捕まえちゃった☆」と、尻を支えながらなでまくるらしい。
普段なら興味もないし変態クソ野郎だな、としか思わないが、シャルに置き換えると理解しかない。
そりゃ捕まえる。
捕まえねぇわけねぇだろ。
シャルはシャルであるだけで俺に対する吸引力がマックスなただ一人のシャルである。
それに俺は普段衝動のままシャルに抱きつくので、そのまま抱き上げたって違和感がない。
すると俺のほうが視線的には下になるから、俺が小さくてドキッとする筈だ。
となれば、次は顔だが。
「うし、俺が許す。地味顔になるまで存分にボコボコにしろ」
「ちょいまちーの。マゾみを出されても魔王様即時回復しちゃうじゃん? ムリくない? ムリムリじゃない? ムリめの魔王じゃない?」
「んぐおおお地味な顔ってなんだよッッ!」
わかってはいたが整形だろうがなんだろうが損傷を受け付けない自分に、ズゥン、と床に手をついて落ち込んだ。
(わからねぇ……地味顔ってなんなんだ……っ!?)
俺の目には自分が地味顔に映っているという事実を、周囲の評価が覆す。
パーツがアレなだけでカラーは地味な黒なのに、どうしていつも派手顔と言われるのか。
魔眼効果で目つきが魔王だとか、王座に座ると常に煽り角度だとか、笑顔なのに暗黒微笑だとか、一見は軒並み塩対応だとか。
正直、全部素だ。
誰も好き好んで魔王感を出しているわけじゃない。
床に四つん這いになって落ち込んでいる俺のどこらへんが魔王なのか、本人的にはちっともわからないのである。
クソッ、意味がわからん。
回復力に関しても、そもそも、仕方がない必然的な問題だ。
魔王である俺は、身体だけは馬鹿みたいに丈夫に決まっている。魔界一丈夫だ。
舐めんなよ馬鹿野郎!
体だけは! 体だけは最強な自信があるんだよ!
言っとくケドな、俺のメンタルは正直百年超えの魔境ソロライフで成長途絶してたんだよ。
つまり魔王就任当時のコミュ力なら、大体三歳児だぜ? 幼児魔王だ。
更に魔王になってからも魔族不信でガチガチに気を張りソロライフは続行。
先代シャルと言う魔族生の恩人に出会い、また他とコミュニケーションを取れるようになって、十年。
愛するシャルと出会って愛を知り、恋焦がれる熱い胸の高鳴りを日々感じて大体一年。
「俺のメンタルは人間で言うと繊細な十四歳ぐらいなんだよ恋愛マスターッ!」
「魔族で言うと幼児だけどにゃん☆」
「顔面を地味にする幼児向けの秘策を授けろマルちゃん。出来栄えによっては今度夜会に連れて行ってやる」
「俺に任せなベイビー」
途端──キリッと真剣な顔で親指を立てたマルガンは、俺に目と口の位置に穴が空いているだけのシンプルで白い、顔全体を覆う仮面をサッと手渡した。
マルガン、お前……やっぱり天才だな……。
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BL
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