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六皿目 純情変態桃色魔王
08(sideアゼル)
しおりを挟むちなみに俺が逃げ込んだこの部屋は、マルガンの私室だったりする。
全体的に目がチカチカするし趣味が悪い。
つか、こいつは仕事してねぇけどなにしてんだ。
俺はある程度仕事を片付けてからの立派な休憩時間だが、アホは当然のように自室にいたぞ。
衝撃展開過ぎて話を聞かせた手前、疑惑に対してはどうともしない。
けれど書類仕事を全てゼオに押し付けているマルガンの仕事は、外出が多いのだ。
部下の訓練。巡視隊を率いて見回り。軍事演習。
そして放っておけばアホほど増える魔物(魔族じゃねえぜ)の討伐等が、主な仕事である。
つまりどれもこれも私室に引き篭れそうにない仕事な訳で……またサボりか。
お察しの現状をジト目で見抜くと、マルガンは俺の視線に気がつき、ギクッと肩を震わせ目を逸らす。
そして誤魔化すように呑気に笑いながら、まあまあと俺の肩を叩いて諌めた。
「お、俺っちのことは置いといてねっ? 話はわかったから、魔王様のお悩み解決すべきじゃんね! お妃ちゃんの好みに近付けて、バッチリハートをゲットだぜ! 今もマジラブされてると思うけど、も~っと好かれて困ることはないわけだしぃ? 恋愛マスターマルちゃんこと俺っちが、全面協力するよ~!」
「お前はバッチリ仕事中だぜ」
「話がわかる男がボスで俺っちは幸せ者さ」
ガバッと起き上がった俺が真顔で肯定すると、マルガンはキリッとしたキメ顔で親指を立てる。
──この瞬間。
俺こと、〝もちろん全ては嫁基準。溺愛の国のポンコツ魔王・アゼリディアス〟と、〝仕事とアタシ? いいえ下半身です。スケコマシ陸軍長官・マルゴリー〟は、結託。
見事たったの二秒で脳内桃色コンビが結成されたのであった。
仕事?
ンなもん追いつかなけりゃ、後で徹夜キメるぜ。余裕だぞ。
舐めんなよ? こちとら何十年連勤の魔王様だったんだぜ。ふふん。
♢
──そんなこんなで、半時間後。
何十年とこの容姿である俺はいくら食べてもつかない駄肉に見切りをつけ、マルガンの提案で服の中に布を詰め込んだ姿になり、鏡の前に仁王立ちしていた。
以前シャルの好きな動物と爬虫類を両立する為に、獣耳とドラゴン尻尾を求めていた時あみだした獣耳形態にも、既にチェンジ済みだ。
頭の上にはぴょんと立った狼の耳。
人型の耳がなくなったので、獣耳のほうに俺のピアスが移動している。まぁそういうもんだ。
尻尾を出す穴を下衣に開けるとスースーして気持ち悪いと学んだ俺は、衣服のつなぎ目から外に尻尾を出していた。
鏡の中に映るのは、獣耳獣尻尾装備で腹部にこんもりとちょっとした膨らみを持つ俺だ。
尻尾がパタパタと嬉しげに揺れるのを止められない。
誇らしくフフンと笑ってみせる。
「フッ。パーフェクトだ、マルガン」
「にっひひ~良案っしょ? これぞ見事なオーク腹! お妃ちゃんメロメロ間違いなし!」
「バッカよせよ気が早ぇだろっ」
ドヤ顔を晒す俺に、マルガンはパチパチヒューヒューと野次を飛ばした。
満更でもない俺は喉を鳴らす。
これでシャルもメロメロか。
(クックック……! 期待感でしっぽが揺れるぜ……!)
情報では、シャルはもう自分の部屋──俺との部屋に帰ったらしい。
ということは、このまま凸れば「今日のアゼル、すごくイイな」的な感じになるのでは?
いやなる。
なるに決まってる。
「よし行くぜ、マルガン。お前には俺の勇姿を見届ける栄誉を与えてやる」
「ガッテン承知ちゃん! 俺っちアイでバッチリ見届けるよ~!」
パッタパッタと尻尾をフリフリする俺と、好奇心と出歯亀と公然のサボりでウキウキのマルガン。
俺たちは互いに心底真剣かつ手応えを感じながら、意気揚々と部屋を出て駆け出した。
もちろん、誰も止める者はいない。
脳内は桃色だろうが、見た目は魔王と陸軍長官だからだ。
(待ってろシャル! お前好みにパワーアップした俺が、お前をもっとメロメロにしに行くぜ!)
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