本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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六皿目 純情変態桃色魔王

07(sideアゼル)

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 とりあえず世界の常識シャルかわいいを唱えることで、俺は初撃を耐えた。

 ──が。

 放たれたシャルの好みのタイプで、ものの見事にメンタルはズタボロになった。

『身長が小さめで……あまり眩しくない、健全な面相で……やや三段腹ぐらいの、適度にたるんだ身体で……』

 ぐはッ、俺のほうが背が高い……!
 残念ながら魔王仕様で、魅了アップの俺のご尊顔……!
 努力も虚しく引き締まった腹筋に、軽やかに動けるよう、身体を重くしない程度に鍛えた身体……!

『あぁ……なるほど。確かにそれならのほほんなお前的にも、安心感あるね』

 あっ安心感だと……っ!?
 シャルの好みのタイプじゃねぇ俺に、安心感がなかったのか!?

『そうなんだ。後は個人的に獣耳が欲しいのは置いておいて……俺の勝手な要望でいいなら、あまり(シャルに)優しくし過ぎないでほしいかもしれないな』

 ! 獣耳はあるぜ! あるんだぜシャル!
 だが……優しくするなって、どういうことだ!? 厳しい男が好きなのか!?

 どんどん知られざる妃の好みのタイプが割れて行き、俺はハラハラと動揺で廊下を荒らしながら、聞き耳を立てていた。

 ヒットポイントは赤ゲージ。
 これ以上は耐えられない。

 だがしかし、よろよろと肉体改造計画を練る俺に──とどめを刺した会心の一撃。

『あれが……上手い人がいいな。俺は実のところいつも、どう断ろうかと悩んでいるんだが……アゼルは強引だから……』

『──ほら、下手くそだろう?』




「下手くそ……この俺の……実は百年越えの童貞を拗らせていたことが……バレていたとでも言うのか……」
「魔王様~! 帰っておいで~! せっかくのイケメンが台無しだよ~ん?」

 ガーンと落ち込み度が地底に達している俺の話を聞き、軽い語調の慰めが降りかかる。

 ソファーに突っ伏する俺の体をゆさゆさと揺さぶる軟派な男は、この部屋の主だ。

 へらっと緩い笑みを常に浮かべ、肩にかかるくらいの柔らかな金の髪。
 誘うようにゆっくりと瞬きをする、タレ目の甘いマスク。

 黒い軍服に身を包み、息をするように誰でも口説くこいつ──マルガンは、魔界きってのチャラ男でサボリ魔だ。

 もっと言うと俺の桃色事情系知識の大元で、陸軍長官である。

 笑死魔将、マルゴリー・マルゲリーテ。
 副官のゼオはスケコマシと呼んでいるぜ。

「ガチ凹みじゃぁん、魔王様ぁ~」

 しかし残念ながら今の俺には声をかけながらのぞき込んでくる女受けバツグンのハニーフェイスも、土偶に見える。

 嫁に下手くそだと言われた男の気持ちが、経験豊富なチャラ男にわかるか。
 俺はシャルならば土偶でも勃てるってのに、うう……ッ。



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