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六皿目 純情変態桃色魔王
06(sideアゼル)
しおりを挟む質がいいのにゴチャゴチャした変な柄のパッションピンクのソファーに顔を埋めながら、男としての自分が終わったことを噛みしめる。
研究所のいろんなところに、足の小指やら額やらスネやらぶつけた。
シードラゴン型の踏みつけるとピヨピヨ鳴くオモチャを、うっかり鳴らしもした。
そして俺は最終的に、研究所の扉を門ごと破壊して逃げた。
それほどのダメージを負ったのだ。
満身創痍の俺の頭の中をぐるぐる回っている言葉達は、今まで知らなかった衝撃の事実にほかならない。
順を追って説明しよう。
すっかりオーバーキルされた俺のメンタルへ、無垢な言葉達で襲いかかった数々の事実についてだ。
まず、対俺リーサルウェポンであるシャルの初撃がこちら。
『いや、抱きたいけどな』
アイツ俺を抱きたいのか!?
全く懸念していなかった立ち位置逆転願望に、俺はまず目を剥いた。
あの、あの手この手で開発され熟れきった身体が、抱く側だけで満足できるのか。
甚だ疑問だが、絶対そこまで考えてねぇ。
俺はシャルが求めるならこの身を捧げる覚悟だが、正直不可能に近い。
アイツが俺にあれこれするんだろ?
俺が押し倒すのを我慢できると思ってんのか? 俺だぜ?
しかもキスマークもつけられないくらい、防御力の高い俺だ。
シャルの剣だこの名残がある骨張りつつもほっそりした指じゃ、俺の括約筋には勝てねぇぞ。多分。
そして大前提として、シャルのほうが圧倒的にかわいい。かわいいの権化。
俺以外の奴らは全員「いや鈍感で天然ってだけで、かわいい要素はねぇだろ」と言うが、あいつらは目が腐ってやがる。
いいか?
持病のシャルかわいいが発病したから、真剣に聞きやがれよ? 有象無象共め。
シャルは食が細いので細身だが背も高いし筋肉もある程度あるし、面差しもキリッとした端正な顔立ちをしているのだ。
確かに昔、魔界にやってきたての当初は無表情だったし、どことなく自分の物事に対して投げやりでもあった。
そう思うとかわいくねぇと思うのは、無理もない。ま、素人はよく踏む過ちだぜ。ふふん。
しかし。ここからがプロフェッショナルのシャルかわいいポイントだ。
今でも素の顔は真顔気味で、慣れない人はとっつきにくそうと思うかもしれないが、実際は冗談も言うしよく口元は笑っている。
懐に入れた人のことはとめどなく受け入れる、無敵の包容力。
慰めたり褒める時に頭をなでて相手をめいいっぱいかわいがる、素敵な癖。
不安にならないよう気持ちは素直に告げ、好意は全面に押し出してくれる、尊すぎる愛情深さ。
シャルは親しい人の悩みごとに対して話を聞かずに否定したりは、絶対しねぇんだ。
否定されないんだぞ?
それがどれ程サンシャイン属性なのかわかるだろ? 最強だろ?
ほら見ろ。どこからどう見てもかわいいじゃねぇか。だから抱かれるべきはシャルだ。
シャルの行動を並べ立てると俺より男前じゃねぇかとかは、この際無視しやがれ。
どんなに格好良くても、俺にはかわいく見えるかんな。
俺の嫁が今日もかわいい。かわいいの擬人化が俺の嫁。
閑話休題。でもないが多少脱線したので、区切りをつける。
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