本日のディナーは勇者さんです。

六皿目 純情変態桃色魔王

０５（sideアゼル）

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　午後にずれ込んだ玉座での報告会と貴族連中との会合を終えて、廊下を歩いていた時だ。

　窓の外でシャルがユリスに引っ張られ、魔導研究所に向かう姿が見えた。

　元々、ユリスはシャルを嫌っていたらしい。
　ユリスは俺を慕っているから、俺がシャルを特別に扱うのが気に食わなかったみたいだ。

　それは後になってワドラーが教えてくれて、俺は初めて知ったことである。

　だが俺とシャルのあの日──恋を自覚して想いを遂げた日の、次の日。

　嫌がらせをしたことを謝ったユリスを、シャルは許し、更にユリスに自分を殴ってもいいぞと言った。

　俺はいろんな意味で初めてを終えた朝が照れ臭すぎて隅に隠れていたんだが、話は聞いていたわけだぜ。

　そこ、情けないとか言うな。
　朝チュンは高等イベントだ。俺には早すぎた尊さである。

　あの日のシャルの言葉をまとめると、こうだ。

〝ユリスの先手で恋を自覚して今こうなったから、感謝している。けれど恋敵にお礼を言われるのはユリスのプライドに触るので、なにも言わない。だから失恋の鬱憤晴らしとして、殴っても構わない〟

　もちろんキャンキャンとユリスに怒られていた。潔すぎる。

　そうやって遺恨を残しそうな複雑な事案や、仲違いが起こりそうなことは、なるべく先にきちんとありのまま話す。

　その上更に拳で手打ちを提案するという男気満載のシャルには、部屋の隅から惚れるしかなかったぜ。

　ユリスもそんなシャルに絆されたのか諦めたのか呆れたのか、恐らく全てだが、ユリスとシャルはあれ以来仲がいい。

　海軍魔導研究所所員から魔王城魔導研究所所員に栄転したユリスは、プリプリ文句を言いながらも世話を焼き、シャルに構いに行っている。

　多分あいつらはトモダチってやつだ。
　お気に入りなんだろう。

　俺は手を繋いで仲良く歩いている（引きずっているとも言うが）ユリスとシャルを機嫌よく眺めて、執務室へ足を進めた。

　聞いて驚けよ？
　この俺、ユリスには燃え盛る嫉妬心が反応しねぇんだぜ。

　まぁ基本、大事にカテゴライズしてる奴らには比較的・・・なんとも思わないしな。

　自分が仕事をしていたりして構いに行けない時は、少しぐらい殺意が湧くが。
　ちゃんと抑えるぜ。俺は優しい魔王だ。ふふん。

　ユリスに特に気を許すのは、城下街の子供を見ているような気持ちなのと、俺を崇拝していることと、なんというか、ほら……子猫と斑ネズミだから。

　女二人が手ぇ繋いでんの見て、なんとも思わねえと言うか。
　万が一にもどうこうされることがないって、勘でわかってると言うか。

　要するに、受け手と受け手だろ。
　可愛いだけだ。微笑ましい。

　シャルとユリスが並んでもパッと見〝近所の面倒見が良いが危なっかしいお兄さんと、おませで出来た弟っぽい子供〟にしか見えない。

　そののほほんな光景も、俺とクソ勇者が混ざると一気にカモにされる哀れな市民と化す。

　そうでなければ、二人揃えば俺にとっては愛でるべき生き物になるのだ。

　俺は到着した執務室で仕事を片付け始めつつ、目から癒しを補給する。

　後でこっそり遊びに行こうか、なんて悪戯心を芽生えさせてクククと笑った。

　──の、だが。

　前述のとおり悪戯心を持って、そっと魔導研究所のユリスの研究室を訪れた──結果。

　まだるっこしい説明は省くが、俺は死んだ。
　現在の俺は、ただの屍である。