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六皿目 純情変態桃色魔王
03
しおりを挟むそう思えば種類はともあれ、好きにならないとやましい気持ちにならないのかもしれない。
触れられても嫌悪感がないぐらいには好意がないと、女性が相手でも羞恥はあるが、なんともない。
……まぁ、その彼女にはやり方を調べてここは大丈夫か? 痛くないか? 気持ちいいか? と丁寧にし過ぎて「知るか! それどころじゃないわよ!」とグーで殴られたのだが。
自分でも欠点だと自覚があるのだが、俺は物事を真正面から受け止めてしまうので、真面目すぎるのだ。
直球全投、変化球、牽制なし、盗塁にも気付かない。……と、盗塁にも気付かない、うぅ……。
流石にそのあたりの話は黒歴史すぎて、ユリスには言えない。
突然ズゥンと闇を背負いつつ、遠い眼差しで乾いた笑みを浮かべる。
闇の深まった俺をユリスは訝しんだが、触れないでいてくれた。ありがとう。
空気を読むできるショタっ子ユリスは、やけ飲みじゃなく優雅に紅茶を飲み、不思議そうに好奇心をにじませて首を傾げた。
「それじゃあ、なんで最初から抱かれる側志望だったわけ? お前の性格的に『大丈夫だ、傷つけないように頑張るから身を任せてくれ』とか言いそうなのに」
「……俺の声マネ似ているな……そんなふうに見えているのか?」
「シャルのくせに包容発言多めだからね。大丈夫だ、任せろ、安心してほしい、かわいいな、よしよし、おいで。そのへんフルコース」
「気がつかなかった」
初めて自分の口癖、なのか? よくわからないがそんなものを知ったぞ。
そしてやたら俺の声真似が似ているのが気になる。声帯の神秘だ。
まぁなにはともあれ、初めから受け身のつもりで迫っていたのはなぜか、と言う話だったな。
答えは簡単。
「アゼルが男だったからだな」
俺はあっさり答えて頷く。
男のアゼルは女性が──かわいい子が好きだろうと思った。
女性の代わりじゃないが、それを目指したほうがまだ見てもらえるんじゃないか、という打算だ。
アゼルはあの容姿に魔王だ。
きっと経験豊富に決まっている。
けれど俺は女性経験だけで、しかも一人だけ。男は一度もない。
受け手に回ったほうが、お互いの身体の相性がイイ気がした。
後は、ユリスが恋敵だったからだな。
同じ土俵に立とうと、無意識に思っていた気もする。
「だから本来俺はしたがりで、アゼルもかわいく見えるから……抱けと言われれば、抱けるぞ」
「ふぅん! なるほどね。だから男受けするかわいいを目指しているってわけ。お前は魔王様を抱けるけれど、魔王様に合わせているから抱きたくはならないってコトね」
俺の説明に、ユリスは意外とまともな理由があると感心して頷いた。
何気ない最後の言葉に、俺は紅茶を飲みながら特に何も考えずに返事をする。
「いや、抱きたいけどな」
──ガタンッ。
途端、扉の向こうで小さくなにかがぶつかる音がしたが、俺もユリスも気が付かなかった。
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リバ展開ではないですぞ(安心安全宣言)
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