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六皿目 純情変態桃色魔王

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「そう言うユリスは、男のほうが好きなのか?」

 万人受けするかわいらしいユリスだが、女性がどうのこうのと言っているところを見たことがない。

 そう思って尋ねると、ユリスはくだらないとばかりに鼻を鳴らす。

「男とか女とかじゃなくて、お父さんくらい美しくて兄さんくらい強ければ、どっちでもイケるね。魔王様が女性でもいいもん」
「リューオが女性な「誰がクリーチャーと恋に落ちるワケ殺すよ?」くりーちゃーか……」

 友人の女体化が睨みつけるユリスにクリーチャー扱いされ、どぎまぎと黙る。

 これは聞かない限り俺の心に秘めておくぞ。安心してくれ、リューオ。

 ゴホン。それは置いておいて。

 好きな性別などないというユリスの答えには、素直にかっこいいと思った。基準が明確だ。

 美形の犬耳イケオジなワドラーレベルで容姿端麗な、まだ見ぬお兄さん程強い存在なら恋愛対象になるらしい。

 ふむ、相当絞られるな。
 もう少し具体的に聞きたくもなる。

 恋愛対象なんて言うテーマを得て、更に女子(?)会は話がポヨンポヨンと弾む。

 ベリージャムクッキーをお供に、話題は好みのタイプに移った。

 ユリスの好きなタイプは恋愛対象内の存在前提で、容赦がなくクールで危険な香りがするのに、どこか優しい人だそうだ。

 できれば黒髪細マッチョが理想らしい。
 冷たくアンニュイな瞳と見下した視線がたまらない、と語られる。

 このまま進めば個人を特定できそうだぞ。その個人は俺のお嫁さんだ。

 さり気なく金髪ワイルドイケメンはどうだろうと言ってみると、「人の知らない間に魔物退治に出て返り血を擦り付けてこない人にして」と、冷たい瞳と見下した視線で棒読みされた。

 胸きゅんというよりヒヤドキである。
 流石ユリス。猛獣であるリューオを操れる美少年。

「お前の好きなタイプ……といきたいけど、どうせ魔王様なんでしょ。わかってるよ」

 ユリスのタイプを聞いて次は俺、となったみたいだが、答える前にはいはいといなされた。

 間違いはないので否定はしなかったが、そんな話をしたことがないので、改めて考えてみる。

 好きなタイプか。
 いや、好きなアゼルのタイプだな。

(んん……完璧なアゼルを敢えて変えるとすれば、もう少しこう……顔面偏差値を落として頂いて、できればスタイルも健康を損なわない程度に崩して頂いて……具体的に言うなら、んんん……)

「身長が小さめで……あまり眩しくない、健全な面相で……やや三段腹ぐらいの、適度に弛んだ身体で……」

 俺が思うまま話すと、ドカッガタガタッ、と扉の向こうから音がする。

「あぁ……なるほど。確かにそれなら(魅了系由来の無自覚モテ率が減るので)のほほんなお前的にも、安心感があるね」

 ゴンッ。

「そうなんだ。後は個人的に獣耳が(自分に)欲しいのは置いておいて……俺の勝手な要望でいいなら、あまり(他の人に)優しくしすぎないでほしいかもしれないな」

 ピヨピヨ。
『あぁん!? なんだよこのオモチャはッ!』

 んん。さっきから妙な音が聞こえていたが、ついにどこかから声が聞こえた。

 ヒヨコの鳴き声も聞こえた気がしたが、気のせいだろうか。

 キョロキョロとあたりを見回すが、すぐに音が止んだので、ユリスと向き合い首を傾げる。

 おそらくどこかの部隊が、近くで訓練でもしているのかもしれないな。

 そう思った俺は気にするのはやめて、自分の好みのタイプを思案する。

 少し考えると、そういえばもう一つちょっとした好みのタイプがあったことを、思いだした。

 好みのタイプと言うか、できればと言うだけのことなんだが。

「あれが……上手い人がいいな。俺は実のところいつも、どう断ろうと悩んでいるんだが……アゼルは強引だから……。……ほら、下手くそだろう?」
 ドカァァァンッ!
「なっなに!?」

 会話の途中だが、今度こそどこかでなにかが破壊されたような音がはっきりと聞こえた。

 驚いた俺達はぽかんと間抜けに口を開けて、なにがあったのかと狼狽する。

「プ……プレゼント選びと、節約が……」

 呆気にとられながら呟いた俺の言葉は、破壊の震源地に届くことが、なかったのであった。



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