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五皿目 元・勇者VS現・勇者
08
しおりを挟む「ステータス」
そんな俺に構わずリューオが詠唱すると、フォン、と声と共に音がして、かざした手の前に画面が現れる。
俺達からすると文字が反転して読みにくいんだが、ちゃんと見えているリューオは、ピシッと固まってしまった。
アゼルは訝しく睨み、紅茶を飲んでいた俺は首を傾げて、リューオを見つめる。
どうした? ユリス不足か?
「おい。この俺のステータスを見て、なんで固まってんだ。魔族は見れねぇのか?」
「……はー……マジクソふざけんな案件だわ……ゴリラってか、キングコングじゃね……」
声をかけられ再起動したリューオは、ツイ、と手のひらを動かして、アゼルと俺に見えやすいように画面を動かしてくれた。
そこに映っていたのが、こちらのステータス。
〝アゼリディアス・ナイルゴウン(第一形態)
職業:魔王
個人固有:魔眼
種族固有:全能力値10%アップ(夜限定)・常時HP5%自動回復
スキル適正:剣技・格闘術・闇魔法・魔法陣・常時威圧・殺気察知・器用・怪力・物理耐性・魔法耐性・全状態異常耐性・魔物言語・黄金律・悪運・変態・収集癖〟
魔王様の魔王様らしいステータスを把握して、ふむと納得する。
「アゼル、変態ってなんだ?」
「おっ俺は変態じゃねぇだろッ!?」
「いやそこかよッ!」
画面を覗きながら首を傾げる俺にアゼルが弁明をし、リューオは額に青筋を浮かべてソファーをパシコンッ! と叩いた。
いや……すまん。
そこしか気にならなかった。
全然ふざけていない真剣な感想なんだが、硬直した負けず嫌いのリューオは納得いかないらしい。
とはいえ俺は一度戦った時から、魔王チートオチには慣れているからな。
もう魔族のポテンシャルに驚くのはきりがないと、この一年と少しで学んだのだ。
周りが化物ばかりなので忘れがちだが、魔族自体、基本的に人間基準だと一騎当千のチート種族だった。
アゼルはその王様だ。
ポテンシャルなら誰よりも高い。
しかも第一形態と書いてある。
恐らく第二から最終形態まで、種族固有のスキルあたりが変貌するんだろう。
(ふむふむ、なるほど……姿が変わるからな。うん、あり得る。慣れた。いつものことだ)
しみじみと浸る。
当のアゼルはリューオを無視して「収集癖……ハッ!」と呟き、画面をグリグリ擦って消そうとしていた。消えないぞ。
ズズ、と紅茶を啜り、ほっと一息。
収集癖と聞き、少しいたたまれなくなった俺だ。
(宝物庫の俺コレクションのことだろうな……)
しかしスキル適正は生まれつきなので、コレクターの素質が大いにあったわけだ。
少し変態気味なのもな。
ちなみに後天的にスキルを取得しても、ステータスには反映されない。
例えば凄く修行して料理の達人になったとしても、元々素質がなければ、ある筈の料理スキルは非表示なのだ。
ステータスの神様も、流石にそこまで把握していられないのだろう。
「おま、落ち着いてンなァ~!」
そんな俺をリューオが有り得ないものを見る目で見つめ、大袈裟に嘆く。
「テメェの旦那ゴリゴリのゴリラだぜ? デコピンで脳味噌スイカみてぇに弾け飛ぶんじゃね?」
「ん? そこはいつも力加減が完璧だから、大丈夫だ。悪運スキルが気になるが……」
「悪運ねェ……。あ~、だから騒動起こしてもなんやかんや丸く収まってんだろ? 多分」
「いやまず騒動起こしたくねぇんだよ俺は……ッ! スキル消せねぇのか……!? 変態とか変態とか変態とか!」
なるほど。
俺とリューオはアゼルの波乱万丈を、なんとなく納得した。
スキルのせいか。
取り外しできないからな。
アゼルは指でゴシゴシとまだ画面を擦っているが、映像のようなものなので指はすり抜けてしまう。
当然消せるわけもなく、ズモモモッ、と黒いオーラを出していた。
うーん、俺は多少変態でも構わないぞ。
アゼルが好きだからな。
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