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五皿目 元・勇者VS現・勇者
06
しおりを挟む読めなくてもアゼルが俺の名前に興味を持ってくれたのが嬉しいので、一緒になって指を指す。
うん、自分でも単純だと思う。
「そうだぞ。オオカワ・ショウリュウだ」
「ウォーカー・シャォルゥー?」
「ふふ、やはり伝わらないんだな」
異世界人の名前は正式に歴史に残らないように世界の力が働くらしく、聞き取りにくいそうだ。
アゼルはちゃんと聞こえないことにムスッと不貞腐れた。
気に食わない表情をしたまま、苦々しく画面の文字を睨む。
それを見たリューオは首を傾げながら、自分を指差した。
「ちなみに俺は篝 雄緒だけどよ、なんて聞こえてんだ?」
「あぁ? お前は……クァーリ・リュルーウォだ。お前らの名前、こっちからすりゃ水の底からスローで喋られてるみてぇなんだよ」
本当の名前がちゃんと理解できなくて不満たっぷりのアゼルは、リューオの名前もやはりちゃんと聞こえていないようだ。
リューオはほら、と自分のステータスを表示して名前のところを指差すが、アゼルには読めないので、眉を顰めている。
(微笑ましいが、あまり意地悪をするとアゼルの負けず嫌いに火がつくぞ)
心の中で一人囁き、笑みを浮かべながらリューオのステータスを覗き見した。
〝篝 雄緒(リューオ)
職業:勇者
スキル適正:剣技・炎魔法・格闘術・物理耐性・魔法耐性〟
「おお」
スキル適正が三つあるのは凄いと言ってくれたが、リューオは五つもある。
本物の勇者らしいステータスだな。
ちなみに耐性スキルはレアだぞ。それが二つもとは。
読んでみろよ、読めるかアホ、なんだとコラ、やんのかあぁ? と仲良く戯れている二人を置いて、関心する。
だから人間の身で魔王の喧嘩相手が務まるんだろうな、と、妙に納得してしまった。
「つか魔王のステータス見せろよッ」
「はぁ? まず俺が自分のステータスを見たことがねぇぜ。魔界、神殿ねぇかんな。魔族はスキル……っつか、生まれつきの種族の能力ぐらい自分で知ってるし、役職は名付けの水晶で決まるし」
「なるほど、文化の違いか」
「へぇ……じゃあ尚のこと見てみようぜ~ッ! 弱点見つかるかも知んねェだろッ?」
「それが本音だなクソ勇者が」
ニヤニヤと目を輝かせたリューオの提案に、アゼルはチッと舌打ちをした。
それから隣に座る俺の体を抱きしめ、リューオの相手で減った英気を養い始める。
省エネなアゼルに乗り気じゃないというのを察したのか、リューオは「なぁ~シャルも気になンだろ?」と俺に振ってきた。
途端、アゼルの頭がぴくっと跳ねる。
んん? ええと、俺は、そうだな……。
そもそも魔族のスキルってどの程度あるのかすら人間は知らないからな。
そういう意味では気になるかもしれない。
でもアゼルがいいよと言うなら俺はなんでも知りたいが、言われないなら無理にとは思わないぞ。
思考がまとまったので、ひとつ頷く。
「俺はアゼルのステータスがどうあれなにも構わないから、嫌だと言うなら鑑定しなくていいと思うぞ? けれど、アゼルのステータスは……きっと凄く強くて、かっこいいんじゃないかとは思う」
「よしクソ勇者、さっさと好きなだけ俺のステータスを見やがれ。まぁ、強くてかっこいい俺には弱点なんかねぇけどな! フフン。クックック……!」
「ニヤニヤしてんじゃねェよ。潔い程手のひらクルクルしやがってェ……ッ」
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