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後話 欠陥辞書夫夫
01
しおりを挟む「ン。夢で俺、そんなこと言ってたのかァ」
「あぁ。それで俺は一週間ぶりに目が覚めたんだ」
ベッドで身体を起こして夢の話をすると、話を聞いたガドは、ふぅんとなにやら考え始める。
考え込むガドを見つめ、思い返した。
──俺が目を覚ましてから、今日で三日が経つ。
四肢はくっついているが体力が落ちているので、いきなり前と同じように動くのはあまり良くないと診断されたのだ。
食事も徐々に回復食から慣らしていくので、大事を取って仮部屋でベッド生活をしている。
その間に見るも無残に壊れてしまった、俺達が住んでいた一棟を、急ピッチで復興しているらしい。
今はもうかなり再建が進んでいるみたいだ。
あの棟は魔王を始め、ライゼンさんや官吏の部屋があったので、職人を総動員して全力建築中だと言う。
アゼルも流石に申し訳なく思ったのか、ポケットマネーを黙ってライゼンさんに押し付けていたそうだ。
そして全ての元凶である絵画王子──リシャールは、絵画を砕かれ消えてしまった。
本体である絵画の破片はと言うと、アゼルのとっておきの魔法である闇の世界に飲み込む魔法で、永久に出られないよう閉じ込めたらしい。
落ちるとアゼルでも取り出せないとか。
そして死ぬわけでもなく、漂い続ける。
リシャールの場合は幽霊なので、もし存在が続いていても寿命で死ぬことができないだろう。
どうしたって永遠に闇の中だ、と、真顔で言われた。
絵画が砕けて聖法がなくなっても霊体は霊体だから、念の為の、無限地獄なのだ。
そういうことの次第は、一昨日に初めていろいろと聞かされたばかりだったりする。
理由はあの後、俺とアゼルは泣き疲れてしまい、二人でまる一日寝ていたから。
俺は言わずもがなとして、アゼルも精神の磨耗が酷かったのて、必然だろう。
お見舞には普段から親交のあるみんなが来てくれて、各々の言葉を貰った。
俺は申し訳なく思い、萎縮していたぞ。
そしてお見舞い合戦も落ち着いた今日。
様子を見にやってきたガドが話し相手になってくれているから、眠っていた間に見た夢の話をしているところだ。
長くなったが、そんな話である。
俺の話を聞いて顎に手を当てていたガドは首を傾げ、そういえばと呟く。
「お前が寝てる時なァ? 夜中に魘されてること多くて、ブツブツ言ってたから、俺返事したことあるぜィ。ちょうどお前が魔王と寝てた夜だな」
「あぁ、なるほど。それで夢の中にその言葉が出てきたと言うことか……」
「ンン。あん時は魔王も魘されててなァ……大体似たようなコト言うから、お前ら」
「アゼルも?」
こくりと呆れたように頷かれて、俺は歯がゆいような気持ちになった。
だからか。
やっぱりアゼルは眠れていなかったんだな。
魘されているのを見たことはない。
アゼルは俺が眠っていた間の自分の様子を話さなかったが、寝付きのいいアイツがそうなるくらいに、気が休まることがなかったのだろう。
きゅぅ、と眉間にシワを寄せた俺を見て、ガドは俺の眉間に物凄くフワッとデコピンをした。
うん。ピンしてもいいからな。
俺の身体を気遣っているのだろうが、相変わらず過保護だ。
「お前らの辞書には、人に頼るって言葉が載ってねェの?」
けれど予想していなかったセリフを吐かれ、キョトン、としてしまった。
不機嫌そうにビチビチ尻尾を揺らしながら、ガドは俺を見つめる。
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