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三皿目 魔王城の宝物庫
07
しおりを挟む──アゼルが俺コレクションを本人に見られるのを阻止するために必死に走っているのと、同時刻。
残念ながら手遅れなことに歴代魔王コレクションを辿る俺とライゼンさんは、アゼルのコーナーまでやって来てしまっていた。
「おお、アゼルのコーナーだな。このへんが今の時代か」
「そうですね。魔王様はシャルさんがいらっしゃるまで殆ど宝物庫に立ち入らなかったんですが、あの日からちょくちょく出入りしていらっしゃるのですよ」
博物館の様に整理された魔王ヒストリーは、とても面白い。
ライゼンさんと茶々を入れながら進むと、数時間ですぐに今の時代に来てしまったのだ。
おお、アゼルの肖像画もあるな。
今とあまり変わらないということはそんなに古くない絵画だが、絵になってもアイツはすこぶる美形だ。
しかし俺が来てからしかコレクションしていないにしては……やたら綺麗に細かい物から大きな物まで、たくさん並んでいる。
アゼルはなにを集めているんだろう?
そう思って何気なく、よくわからない物が並んだ棚に顔を寄せてみた。
「ふむふむ……アゼルも手書きのタイトルが書いてあるな。これは……〝種〟。んん、そのまんまだな。なんだろう?」
「種ですか? 私も魔王様がなにを集めているのか知らないのですが、珍しい植物の種なんですかね」
「アゼルは植物が好きなのか。でもこっちは〝初代触られた〟って書いてある、……布?」
「布ですか? なんでしょう、魔王様の普段着と同じ生地な気もしますが……」
俺とライゼンさんは、二人揃って首を傾げる。
価値のある物を集めているわけじゃないのだろうか。
先代魔王は壺コレクションだったし、魔王は各々なにかしら集めていると思った。
でもアゼルはそれだけを集める程ハマっている物は覚えがないし、気まぐれに飾っているだけかもしれない。
(んん……それにしても、タイトルが単語や感想で、わかりにくいものが多いな……)
俺もライゼンさんも一番良く知る魔王な筈なのに、基準がわからなくて解読を諦めた。
だがそこそこ大きなものを見始めると、ライゼンさんは「これは……まさかこれ全部!?」となにやら驚愕し始める。
「どうしたんだ? 共通項がわかったのか? 俺にはこれはただの檻に見える。名前は〝ハレンチ〟だが……どのへんがだろう」
「ええと、そうですね。それは……シャルさんが攻めてきた時に、一時的に入ってもらっていた檻ですね。つまり魔王様のコレクションはおそらく全て──シャルさんコレクションだと思われます」
「ん!?」
額に手を当てて頭が痛そうに告げられた言葉に、俺は目をぱちぱちさせて、ぽかんと綺麗に並べられた大量の統一性のない物達を見上げた。
なんだと。
初代魔王が嫁コレクションをしていて愛の深さに驚いたが、まさか俺の魔王も同じことをしているのか……?
「こ、これが全部俺関連なのか……。でも種とかあったぞ……?」
「信憑性はありますとも。魔王様が執着したのは、私の知る限り恩人様とシャルさんだけですし……そこにふざけてるとしか思えない強度の魔法陣結界に入れられて置いてあるベッドは、シャルさんの前の部屋のベッドですね」
そういえばなくなってましたから、とライゼンさんは死んだ魚のような目で飾られたベッドを見つめた。
確かに見覚えがある。
ちなみにタイトルは〝寂しい時に〟だった。
俺の使っていたベッドを、寂しい時にどうするんだろうか。
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