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三皿目 魔王城の宝物庫

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 とはいえ迷惑をかけたのでこれを! と金貨をジャラジャラ渡すわけには、いかない。

 お詫びはなにか、キラキラしたものを渡そう。

 俺が魔力で少しばかり光りながら渡せば、より喜んでもらえるかもしれない。

 照明に光を灯す魔法を、自分の周りでやればいいのだ。
 お詫びのキラキラを期待していてほしい。

 内心で光る決意をしていると、ライゼンさんは財宝の棚が綺麗に整列した部屋の端を、指差した。

「私があちらから確認致しますので、シャルさんはあちらからお願いできますか?」
「ん、わかった」
「なにかあったら、遠慮なくお呼びくださいね。文字通り飛んでいきますよ」

 ライゼンさんはフフフと微笑み、夕日色をした背中の翼を軽くはためかせた。

 不死鳥の美しい翼は、ここの財宝にも引けを取らない。

 頼りになる彼に微笑みを返して、俺はよしと意気込み、数のチェックに取り掛かった。


 ♢


「シャルさん、進捗はいかがですか?」
「こちらもちょうど終わったところだ」

 それから数時間後。

 空欄の最後の一つを埋めてヌケモレの確認をしていると、バサバサと翼をはためかせてライゼンさんがやってきた。

 どうやらほぼ同じくらいに終わったようだ。

 ライゼンさんは俺から書類を受け取ってパラパラと流し見すると、柔らかく満足気に微笑む。

「うん、私の記した物とも相違ない。これが最終的な数字で、おそらく間違いないですね。お手伝いありがとう御座います」
「こちらこそ。仕事にかこつけて価値のある物を見られたのでよかった」

 最終確認は恙無つつがなく完遂できたようだ。同じく笑みを返す。

 膨大な量の財宝だったが、基本の出入りが少なかったので確認もさほど大変ではなかった。

 金庫の金貨もわかりやすく纏めて保管されていたので、追加分を数えるだけで問題なかったしな。

 ライゼンさんは書類を召喚魔法で収納し、想定より早く終わったと喜んでくれた。

「時間が余ったので、せっかくですから他の宝物をご覧になりますか? 危険のない物だけになりますが……」
「おお、魔界の宝物は興味がある。よかったら、お言葉に甘えさせてもらってもいいだろうか」
「フフフ、もちろんですよ」

 財宝じゃない──いわゆる歴史的魔術的に価値のある物に興味を惹かれて、俺は好意に甘えて色々と見せてもらうことにした。

 魔界の歴史か、すごく古そうだ。

 どんなものがあるのか想像が難しく、ウキウキと浮かれてしまう。

 どこか子供の頃に戻ったように冒険心がくすぐられてきて、年甲斐もなく高揚してきた。

 ソワソワとする俺の手を、ライゼンさんは「奥の部屋へ参りましょう」と優しく引いて、歩いてくれる。

 なんと、女性の指のように滑らかだ。

 力を入れて握ると折れてしまいそうで、そっと握り返すにとどめた俺である。



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