上 下
217 / 901
二皿目 シャル様が物申す

04

しおりを挟む


 発見時は、そりゃあ焦燥感に駆られたさ。

 目移りされないよう、もっと俺一人で満足してもらおうと、頑張る決意をした。

 近頃は日々意気込みを新たに、不得意分野ながら俺なりに自分磨きをしていたのだ。

 けれど今日はなんだか、当時を思い出して腹が立つ!

 俺だって試行錯誤している!
 筋肉が付き難い体質だが毎日トレーニングをして、スタイル向上に努めているんだ!

 夜だって激しかろうが無限ラウンドだろうが一晩中意識を保てる様、体力アップに励んだり精力の衰えを危惧したり……!

 在宅ワーカーで腹が減らないのに、食事の量を増やしたりしているんだぞ!

 アゼルがくれたセレブ買いの衣服を無駄にしないよう、シンプル路線だが、普段の服装に気を使うようにしてみたりだな!

 アクセサリーだってお菓子屋さんだから普段使いできないが、ウォークインの飾り棚から、お前の好みそうなのを着けたりする!
 似合わないので見せないだけだ!

 それでもイマイチ俺に備わらない可愛いの練習で、この間ガドに見守られながら萌え袖というのを試したぞ!

 俺は日々目移りされない為に、可愛さを磨いていたというのに──!

「イケメンのお前が可愛さまで身に着けるなッ! 俺のことが好きなら、もっと魅力を抑えろッ! 俺以外にモテるな! このっ! このっ!」
「シャルッ! まっ、待ってくれ! 叩くな! ちっとも痛くねぇけど目覚める! なんか目覚めるから!」

 パシィッ! パシィッ! とアゼルを叱りながら叩くと、アゼルは腕でガードしながら必死に制止をかける。

 それをリューオが腹を抱えて笑い続けると、ユリスはリューオに文句を言う。

「こっ公開SMゥ~! ヒィ~! やめろ腹がよじれるッ! そもそも魔王可愛いとか思ってんのテメェだけだっつのッ!」
「アンタ笑い転げるのもいい加減にしなよぉ!? 魔王様は可愛いでしょ! かっこいいし最高で素敵でしょ! 溢れる魅力は抑えらんないよ当たり前じゃん!」
「よしそのまま魔王殺せシャルッ!」
「女性にモテるお前の顔面が悪いんだァァァァア!!」
「目覚めるからぁぁぁあ!!」

 ──ドゴォォォォンッ! という強烈な破壊音と、秘められた苦労。

 俺の怒りのジャーマンスープレックスが決まって、アゼルは研究所の床に頭から埋まった。

 魔導具研究所が、実にボロボロだ。

 最終的には流石に他の所員が様子を見に来てもおかしくない程、ユリスの研究室は荒れてしまった。


 ◇


 しばらくが経ち、ようやく俺の怒りとリューオの爆笑が落ち着いた頃。

 俺はソファーに座らせたアゼルと向き合うように、彼の膝へ馬乗りになっている。

 その首に腕を回し、じっとりと睨みつけるのは、お説教タイムだからだ。
 決してイチャイチャではない。

 なんだそのフワサラの髪は。
 いいにおいがする。経費にあった桃の香油はお前か。

 なに? 俺が桃好きだから?
 馬鹿め、俺の好感度をこれ以上上げるな。次はアイアンクローだぞ。

 そして俺のお菓子を毎日食べて三食も美味しく頂いているのに、なんだこのスタイルは。

 防御力が高すぎて紫外線も弾く上に傷一つないから、肌もピチピチだ。

 魔力量から魅了効果で眩しい顔立ちだとしても、追加で迂闊にシックスパックになるから、民衆にアイドル扱いされているんじゃないか?

 早く三段腹になれ。
 メタボリックは身体に良くないが、多少たぷついても大丈夫だろう。

 ふくよかなほうが抱き心地がいいから、俺は大歓迎だ。

 ん? 太れない体質? 着痩せもするのか?
 よしよし、今の発言でいくらかの女子を敵に回したな。偉いぞ。

 でも嫌いになられるなよ。
 適度にたっぷり愛されていろ。

 にしてもお前はなんで、そんなにいい身体なんだ? デスクワークのくせに。

 太れなくともシックスパックはおかしいだろう。見た目と中身が一致してない。
 メンタルは柔らか魔王じゃないか。

 なんだ? 魔境時代鍛えていたから、筋トレしなくてもある程度筋肉がつく? 魔力で補正されて強化ボディ?

 よしよし、その発言でいくらかの男子も敵に回したな。
 クソ、俺も羨ましいから後で腹筋を触らせろ。

「そしてなにより目つきがエロい。やめろ。そういうところがいつまで経ってもアゼルなんだ。まったく不健全な顔をして」
「はい……」
「お前は目が魅力的過ぎるのだから、俺以外を見なければいいだろう? 簡単なことじゃないか。よそ見するようなら、首輪をつけて誰のものかわかりやすくしてやる」
「はい……」
「わかってないな……。首輪をつけるんだ、返事は一つに決まっているだろう?」
「わん……ッ!」

 悟りを開いたのか、諦めたのか、目覚めたのか。

 よくわからないがアゼルは真っ赤なまま頭からシュウシュウと湯気を立て、されるがままになっていた。



しおりを挟む
感想 215

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

処理中です...