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二皿目 シャル様が物申す

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 まったくどいつもこいつも俺をなんだと思っているんだ。
 勝手に連れ回して勝手に変な道具を向けて。

 どうにも気に食わない。

 そして俺が気分を害しているのに俺を放って解呪だなんだと騒いでいるのが腹立たしい。
 勝手に俺を呪うな、許可を取れ。

 足を組んだまま両腕をソファーの背もたれに引っ掛けて、じろりとここにつれてきた張本人のリューオを睨む。

「リューオ、無理に連れてきたんだ。相応のもてなしをしてもらおうか」
「アァン? 王様みたいな態度取りやがって。なんだそれ、ホストかテメェ」
「王様……フッそうだな、アゼルを連れてきてくれ。アイツにはいろいろ言いたいことがあるぞ」

 嫌味混じりの王様と言う単語を聞いて、俺はすぐに魔王な自分の番を思い出した。

 アゼル、アイツにはこれを機にいろいろ言いたいことがある。

 今日の俺はなんだかなにもかもに腹が立つ上、気分がドンドン過激になってきた。

 そんな俺の態度に、困りきったリューオが特大のため息を吐いた。

「だとよォ、ユリスゥ? このままじゃ魔王のトコまで乗り込みそうだし、解呪の方法が見つかるまではここにいさせたほうがいいんじゃね? ガラ悪ィぞコイツ」
「ううう、仕方ないなぁ……魔王様に手紙飛ばすよ。絶対ショック受けるよもおおおぉぉ~……!」

 ハン、素直なことはいいことだ。

 頭が痛そうなユリスが泣き言を漏らしつつ手紙を出す為に立ち上がり、俺の隣を通過しようとする。

 その腕をぐっと掴んで手の甲をスリ、と親指でなでて唇を尖らせ上目遣いに見つめる。

「褒めてやろうと言いたいところだが……ユリスのそう言うたまに素直なところも可愛すぎて気に食わない。魅力的すぎる」
「はっ!?」
「やめろ似非ホストォッ!」

 なでていたユリスの手を素早くリューオに引き離され、俺は鼻を鳴らしてまた尊大に座り直す。

 お前は自分に素直すぎる。
 そういうところがよくないのだ。馬鹿リューオめ。


 ♢


 手紙を送ってから五分とたたずにやってきたアゼルが、仁王立ちする俺の目の前で正座している。

 魔導具研究所で俺が呼んでいる、と手紙を送られてきて飛んできたら、仏頂面の俺に座れと床を指さされたのだ。

 ユリスがやめさせようとするのをリューオが面白がって止めている。いいぞ。

 アゼルは詳しい事情も知らずになにが起こっているのかという困惑と、怒られるようなことをしたのかという焦燥とで混乱しきっている。

 目を白黒させ、俺をそっと伺うように見つめてきた。

 それを冷たく見下ろすと子犬は泣きそうになったがまだ許さない。心の奥がなにやら軋んでいるが無視しよう。

「アゼル」
「な、なんだ……」
「俺のことが好きか?」
「んっ!?」

 ビクッと身体を跳ねさせるアゼル。

 それはそうだ。
 二人きりならいざ知らず、リューオとユリスが見てるからな。

 リューオがニヤニヤしているのが、アゼルからもよく見えるだろう。

 そしてアゼルは直接的なそういう言葉を、そういう雰囲気でもないのに俺に告げるのが恥ずかしい。

 お前は最高だとかずっと一緒にいるだとかは言えるのに、好きだとか愛してるとかシンプルなことはベッドでぐらいしか言えない男だ。

 そこまでわかっていても俺はギロリとアゼルを睨み、威圧しながら急かすようにトン、と軽く床を踏む。

「どうなんだ、ん?」
「しゃ、シャル……いつもと様子がちげぇぞ、俺なんかしたか……? 誓って浮気はしねぇし、やましいことはなにも……」
「アゼル、俺の質問に答えられないのか」

 静かで抑揚のない声が出た。

 さぁ、と青褪めていくアゼル。

 チラチラと二人に助けを求める視線を送るのがムカつく。
 俺を前にして、よそ見なんて許さない。

 過去を省みてこの状況の正解を探すばかりで、目の前のリアルの俺を無視するのか?

 そういうところだぞ。

 そういう思ったことを口に出さずに自己解決を試みて一人反省会をするから、お前は素直にごめんねが言えない子犬になってしまったのだ。



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