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一皿目 おはようからおやすみまで、暮らしを見つめる魔王です
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しおりを挟む──これまでそんなことを思わなかったのに、今日はガドに肩を組まれて密着していたのが俺は少しこう、変な気持ちだったんだ。
最近になって、俺はこう言う気分になる。
好きな人と好きな人が仲良しなのはいいことだし、二人になにか思うわけじゃないぞ。
俺がなんとなく、寂しいだけだ。
二人でひそひそツンツンしているのも変な気持ちで、その原動力は俺が今まで本当に殆ど抱いたことのない感情だったんだが。
──トスン。
「ふっ……!?」
情けないが嬉しいような複雑な気分で背もたれにもたれていた頭を傾げて、アゼルの肩に当てる。
これもユリスに教えてもらった。
城下の女性誌でブームの〝肩ズン〟というやつだ。
背が俺のほうが低いのでズンできてない。
でもこれで胸キュンしてくれるらしい。
「……イチャイチャしないか」
「すっ、する、かぁ……!」
アゼルの肩に頭を当てたまま上目遣いに強請ってみると、真っ赤になったアゼルが目を逸らしながら頷いた。
アゼルはなんというか、セックスとかキスよりこういう触れ合いが照れくさいのか。
正直俺もだ。
甘えるのが苦手すぎる。
でもアゼルが前もって予定をしていたわけでもなく休みなんてレアなんだ。
俺は元来構いたがりなんだぞ。
ちょっとぐらい、甘えてみてもいいだろう。
よりかかる俺の頭の上に、トスンとアゼルの頬が添えられ頭を重ねられる。
温かい重みが心地良い。
いいな、イチャイチャ。
よし、そしてこれからどうなるんだ?
二人して頬を染めてドキドキしてみるが、恋愛経験値の低い新婚二人。
改まってイチャイチャするとなっても、すぐにはやることが思いつかないのであった。
「巷で流行りの肩ズンなんだが、これからどうすればいいんだ? トキメクか?」
「俺もわかんねぇ。でも俺はこのまま晩飯まで余裕でいれるし、トキメキが止まらねぇ」
「俺も十分満足だが……これはイチャイチャのイの部分じゃないか?」
「うぐ……よし、マルガンに貰った雑誌を見るか」
お互い頭をくっつけたまま、せっかくの休みを二人きりで存分に謳歌すべくイチャイチャを考える。
アゼルは指をパチンと鳴らして、召喚魔法で雑誌を一冊召喚した。
雑誌と言っても現代のようなカラフルなものではなく、薄い本のようなものだ。
製本も簡素で文字と挿絵が書いてある。
見覚えがあるな……これはユリスの部屋にあった雑誌だ。
マルガンと言う人とユリスは同じ雑誌をいつも買っているのか。
真剣な表情でペラペラ捲る雑誌を覗き込む。
「なになに……〝夜とはちがう自然なスキンシップ。お互いの体をマッサージをし合って触れ合ってみる〟」
「マッサージはちょっと困るな……背中だけはやめてほしい……」
「あぁ……シャルの性感帯だもんな。胸もかなり開発したと思うぜ」
「胸筋だな」
お察しした顔をされてコクンと頷く。
俺は肩甲骨の谷間をグリグリされると気持ちがいいんだが、それを見つけられてから執拗に背中を触られ続けて、感度が上がってしまったんだ。
なので指圧されたら困る。
今や谷間だけでなく背骨の上のラインから腰の凹凸まで、弱点は多岐にわたるからな。
アゼルはやり始めたらなんでもしつこいんだ。
〝街で聞きました! 恋人としたいことは?〟と書かれた見出しのページに目を滑らせ、他の方法を探す。
「〝膝枕をして頭なでなで〟。これは今朝やったな」
「べ、別に二回やってもいいんじゃねぇか……?」
「でもまた床に落ちたらいけない。〝後ろから抱きしめて甘える〟。これはいつもされているな」
「ぐぁぁ……ッ今朝の俺ェ……なぜ落ちた……ッ!」
アゼルは膝枕の部分を凝視してからなんだか震え始めて、俺の頭にも震えが伝わってきた。どうしたんだ。
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