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一皿目 おはようからおやすみまで、暮らしを見つめる魔王です
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しおりを挟むニヤニヤしているガドとアゼルがなにを話しているのかわからないが、ガドとアゼルは兄弟のように仲がいい。
実際は兄弟ではないぞ。
だけど、アゼルもガドには少し甘い気がする。
仲がいいことは俺も嬉しい。
嬉しいのだが。
じゃれあう二人を見ていると、ほんのちょっと気持ちがそわそわとする。
こう、なんというか、目の前でヒソヒソしつつの密着は、しないでほしい。……かもしれない。
そんな気持ちはなんだか恥ずかしいので、俺は黙ったまま明後日の方向を向いて誤魔化した。
♢
「感動だぜ……まさか俺にもあんなに美味いものが作れるとは……。でもシャルの作ったやつのほうが、美味かったな」
「作り方が分かれば誰でもできるぞ。味は混ぜ加減や手際と、色々あるからな。アゼルのも十分に美味しかった」
アゼルがガドを空へ追い返して食事を済ませた俺達は、自室に帰ってのんびりとふかふかのソファーで寛いでいた。
現代ならここはテレビや映画でも見ながらと言いたいところだが、当然電化製品はない。
大体のものは魔力で動くし、光源だって魔法でちょちょいだ。
俺の仕事も終わり、今朝買った熊の置物も本棚の隙間に飾ったので、ここからはフリーな時間である。
「シャルは俺といない時なにしてんだ? 普段、俺はこの時間まだ仕事してんだよ。お前が配達を俺の従魔を懐柔して委託したから、執務室に来なくなって時間が空いてるはずだぜ」
「そうか、魔王業は固定休じゃないから何十連勤もザラだったな……」
「恩人に会うまでは何十年連勤だったから別になんとも思わねぇよ」
現代だと労働基準法に抵触しまくっているブラック職業・魔王。
本人はちっとも気にしていないが、俺はアゼルを断固労わりたくなってくる情報だ。
誰だって人間国に逃げ出したくもなるだろう。
一人ぼっちが耐え切れなかった以前に、アゼルは過労で倒れていいレベルだ。
「週休二日を最高権力者にも適応させたい……」
「なにブツブツ言ってんだ? そ、それより、だ。まずお前の俺の知らない時間の話をしやがれ」
「うん? 俺か?」
「そうだ。包み隠さず話やがれ」
「俺は筋トレをしてみたりエアで剣の練習をしてみたり、ガドやリューオと遊ぶか、ユリスの研究所に呼ばれて話に付き合うこともあるな。配達がなくなっても、執務室に行く時があるだろう? ライゼンさんから仕事を頼まれたりする。読書も散歩もするし、手慰みに工作もする」
普段の生活を思い出しながら言うと、アゼルはぐっと拳を握って目的達成と呟く。なんの目的だろう。
自分で言うのもなんだが手先は器用で、現代の社畜時代から異世界の社畜である勇者時代と、働き慣れている俺だ。
あくせく動くことが骨身に染みている俺は、時間の許す限り動き回っている。
体が鈍っていざという時にアゼルを守れないのは嫌だし、散歩をしていると魔王城の中で働く魔族と親交を深めたりもできるからな。
まぁ大抵の従魔は俺と一定の距離を取って、なぜか近付いてくれないのだが。
俺の仲良しはおおむね弱々しい下位魔族だ。
ゾウガメサイズの亀っぽいサンドタートルや、手のひらサイズなのにビルの三階位まで高く跳ぶトビガエルクン等に依存する。
カプバット達と同じく片言の彼らは絶対服従を条件に匿われている魔族なので、仕事はせずのんびり暮らしているのだ。
もふもふの動物ではなく、ツルッとした質感の魔族とばかり仲良くなってしまうな。
その話をすると、アゼルは自分の頬を引っ張ってモチモチ度を確認していた。
大丈夫だ。お前が一番もっちりしている。
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