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終章 本日のディナーは勇者さんです。

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  ◇ ◇ ◇


「……ん…ぁ……?」


 体内が埋まる充足感と滑らかな素肌を触れ合わせる体温の温もりに、ぼんやりと目を開く。

 俺はなにをしていたんだったか。
 意識を失う前の記憶をすぐには思い出せず、ゆるりと数度瞬きを繰り返す。

 すると鮮明になっていく視界に、じっと俺を見つめて拗ねる愛しい男が映りこんだ。


「どうして俺を置いて寝たんだよ」


 しょげた声の叱責。いつの間にやら俺は唯一着ていたはずのセーターを失い裸で、くたりとシーツに沈む汗ばんだそれをギュウギュウと抱きしめられている。

 赤かったはずの窓から差し込む光が、白々と淡い朝日に変わっているような。
 覚醒したての俺には、それが意味することが瞬時には理解できなかった。


「……? なん、朝……ん……?」

「そうだ。……俺はずっとお前のこと見てたのに、お前はちょくちょくオチるし、ずっと正気じゃなかったぜ。馬鹿野郎。どうして俺を見ない」

「ンな……嘘だろう?」


 俺に理解ができなくても、親切な絶倫魔王様は現状説明をしてくれる。

 どうしてお前は俺を見ないんだとお叱りを受けるが、俺はポカンと薄口を開けて、アゼルを見つめ返した。

 寝落ちもそうだが、なによりも衝撃なのはアゼルの持続力だろう。

 始めた時は夕方だったというのに、気がついたら朝日が昇っていた。
 しかもずっと見ていたということは、ずっと俺を抱いていたということか。

 HPゲージがあるなら何本余力があるのやら。凄いことだが使いどころを間違えている。約十時間も飽きなかったのかお前は。


「あぁ……吸血と、久しぶりのコンボは、恐ろしい……」


 疲労や眠気も吹き飛ぶ事実に漏れた声は酷く掠れていて、どれだけ俺が鳴いていたのかが窺い知れた。

 体は泥のように重いし見える肌は歯型とキスマークだらけで、乳首も心なしか腫れている。知らない間にまた新しい部位を調教されていたなんてのは、是非勘弁してほしい。

 現実を受け入れて体をモゾつかせると、内部の圧迫感の原因がグチ、と擦れた。


「ふっ……ん、寝てる時くらい、抜いてくれないのか」

「俺は寝てなかった」


 それはそうだが神妙な顔で言うことか? 事実なんだろうけどな。

 流石に多少休憩は入れただろうがと思ったが、未だ中に入ったままのモノと体中を覆う甘美な倦怠感がこれ以上ない程状況を証明していた。

 下半身はいろいろなものでベタベタだし、シーツはグチャグチャで、お互い髪も乱れている。アゼルだけはむしろハリツヤのいいピチピチの肌だ。

 一晩以上シていたとは思えない。元気ハツラツに見える。なんて男だ。……はっ、そうか。俺の血を飲んでいたからか。

 吸血系の魔族にとって某ドラゴンなボールを集めるアレの仙豆的な扱いである、異世界人の血。

 俺の血は俺を乱れさせると共に、チート魔王を強化していた。
 ……やはり、吸血とセックスを同時にするのは控えてもらおう。




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