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三章 勇者と偽勇者と恩人勇者。
37(sideアゼル)
しおりを挟む俺の生涯の恩人、シャル。
貴方がもうこの世にいないと知って、俺は悲しくて仕方がなかった。
話したいことがたくさんあった。
名前を呼んでもらって、快適に暮らせるよう努力して、俺が貰った安らぎを少しでも返せるようにと思った。
あのあと俺は頑張ったんだぜ。
貴方の言うとおりにしてみると、初めはうまく行かなかったけれど、だんだん俺を慕ってくれる人たちがいると気がつけた。
俺が少しずつ感情を出せるようになると、前よりも打ち解けられるようになった。
もちろん失敗して、間違って、傷つけることも傷つけられることもたくさんあったが……仲間がいると、悲しみは少し和らぐんだな。
今では俺は俺らしく生きて行けている。
それは全て貴方のおかげだ。
戦いになれば、俺はきっと貴方に勝てるだろう。しかし言葉は一言で俺を殺し、そして俺を救うことがある。
貴方は俺を救ってくれた。
あの日の貴方にもう一度会いたくて、そしてできれば心安らぐ貴方のそばにいたくて、一心に貴方を慕っていた日々。
感謝を伝える前に貴方はいなくなってしまったけれど、俺はこれからもずっと、生涯貴方を恩人だと仰ぎ感謝し続ける。
シャル──俺の恩人。
貴方の言う大切な人が、俺にも見つかったんだ。愛なんてわからない俺の唯一無二の愛しい宝物が、見つかったんだよ。
その人は、俺の言葉を最後まで聞いてくれるんだ。
そしていつも誰かのために行動している、優しい男。
俺が泣いたら抱きしめてくれる。頭をなでて、一緒に泣いてくれる。そして泣きやんだら、一緒に笑う。
誰よりも真っ直ぐな人だ。
貴方に似ている。でも違う。
俺はアイツに、恋してしまった。
恩義なんて綺麗なものじゃない。
心がそばにいないと息もできないような不格好な気持ち。
愛するということは、互いの心臓を交換するみたいだな。仕方ない。一緒にいないと死んじまう。
貴方のおかげで、俺は恋をした。
かけがえのないものを、見つけたよ。
俺の心を救ってくれてありがとう。俺をアイツと出会わせてくれてありがとう。
貴方を失った悲しみは胸に残るが、アイツがいればきっとこの先も俺は俺らしく生きていける。
あの日の貴方を俺は決して忘れない。
さようなら、シャル。
──そして俺はお前を、愛している。
「シャル」
追いかけて追いかけて手に入れた宝物を抱き締めて、俺が呼ぶ恋しい音は、ただ一人だけの名前となった。
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