113 / 901
二章 勇者兼捕虜兼魔王専属吸血家畜兼お菓子屋さんとは俺のことだ。
57
しおりを挟む本当にどういう状況なんだ、これは。
素直じゃなくて言葉や態度がツンケンとしていても、俺に対して真摯に感情を向けてくれていたのが普段のアゼルだ。
「今度からここをたくさん触ってやる」
「っそ、そういう趣味じゃないからな……?」
またアゼルの知らない一面。
こういう時、アゼルは少し意地悪になるみたいだ。
吸血を受けたあとの行為では責任を果たすべくひたすらに甘やかだったのに、本当はサドっ気があったんだな。
そんなところを知っても、そんなアゼルが嫌じゃない。むしろ嬉しいだなんて、俺はマゾっ気があったのだろうか。
耳元でククと機嫌よさそうな笑い声が聞こえて、ここが薄暗くてよかったと思った。
「……う、ん……」
明るい中でこんな顔、見せられない。
俺はこうして触られただけなのに、紅潮して惚けたような、情事を思わせる顔になってしまっている。
恋しい男に触れられていると、こんなにも簡単に熱が上がるものなのか。
いつもの毒も入っていないのに、開いていた足をさり気なく閉じなければならなくなった。
ダメだ。浮かれているのはやはり、俺だ。 火照った頭は心のままにもっと、と欲しがる。
アゼルにもっとを貰うには、この関係に新しい名前をつけてもらわないといけない。
どうやって口説けば俺のことを受け入れてくれるのだろうか、とくるくると唸り始める頭。
どんなタイプが好みなのか。
魔族といえ、男の俺じゃダメなのか。
ならかわいらしさを磨けば、責任なんて理由がなくても触れてくれるのか。
そんなことばかり気になって、次はどうすればお前の好きなタイプになるんだろう、そう思っている。
人に好かれる方法なんてわからない、苦手分野だ。
だけど勉強をしている時間はない。
きっと今が一番いいタイミング。……だと、思う。そうだと嬉しい。
攻めなければ。
普段なら恥ずかしくて直接的な言葉で大胆に誘うことはできないが、やはり男としてはノリ気な子のほうがいいだろう。好いてもらいたいなら、頑張らなければ。
それに俺も男だ。
気のある人が自分に触れていて、押さないわけがない。
好きだと強く思ったなら、触りたいし、触られたい。迷惑にならないなら、想いも伝えたいし、できれば……想われたい。
「あ……アゼル……」
この部屋の薄暗さと肌を触れ合わせる興奮が、俺をいつもより大胆にする。
首元にあるアゼルの髪にスリ、と頬を寄せて、胸元をなでる手に自分の手を重ねた。
「お前は胸を触るのが好きみたいだが……」
「いや……ッ、……ま、まぁ、そうだぜ」
「ん……なら、俺の胸はどう、だろうか……」
「ど、どうっ……!?」
「こう、一般的に気持ちのいい胸じゃない俺の肌に触れるのは、嫌じゃないか? その……硬いだろ……?」
そっと、そっと。
誘われたから嫌々仕方なくだなんて言われたら、目も当てられないほど落ち込みそうで、慎重に言葉を探す。
60
お気に入りに追加
2,669
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる