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二章 勇者兼捕虜兼魔王専属吸血家畜兼お菓子屋さんとは俺のことだ。

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 本当にどういう状況なんだ、これは。

 素直じゃなくて言葉や態度がツンケンとしていても、俺に対して真摯に感情を向けてくれていたのが普段のアゼルだ。


「今度からここをたくさん触ってやる」

「っそ、そういう趣味じゃないからな……?」


 またアゼルの知らない一面。
 こういう時、アゼルは少し意地悪になるみたいだ。

 吸血を受けたあとの行為では責任を果たすべくひたすらに甘やかだったのに、本当はサドっ気があったんだな。

 そんなところを知っても、そんなアゼルが嫌じゃない。むしろ嬉しいだなんて、俺はマゾっ気があったのだろうか。

 耳元でククと機嫌よさそうな笑い声が聞こえて、ここが薄暗くてよかったと思った。


「……う、ん……」


 明るい中でこんな顔、見せられない。
 俺はこうして触られただけなのに、紅潮して惚けたような、情事を思わせる顔になってしまっている。

 恋しい男に触れられていると、こんなにも簡単に熱が上がるものなのか。

 いつもの毒も入っていないのに、開いていた足をさり気なく閉じなければならなくなった。

 ダメだ。浮かれているのはやはり、俺だ。 火照った頭は心のままにもっと、と欲しがる。

 アゼルにもっとを貰うには、この関係に新しい名前をつけてもらわないといけない。

 どうやって口説けば俺のことを受け入れてくれるのだろうか、とくるくると唸り始める頭。

 どんなタイプが好みなのか。
 魔族といえ、男の俺じゃダメなのか。
 ならかわいらしさを磨けば、責任なんて理由がなくても触れてくれるのか。

 そんなことばかり気になって、次はどうすればお前の好きなタイプになるんだろう、そう思っている。

 人に好かれる方法なんてわからない、苦手分野だ。

 だけど勉強をしている時間はない。
 きっと今が一番いいタイミング。……だと、思う。そうだと嬉しい。

 攻めなければ。

 普段なら恥ずかしくて直接的な言葉で大胆に誘うことはできないが、やはり男としてはノリ気な子のほうがいいだろう。好いてもらいたいなら、頑張らなければ。

 それに俺も男だ。
 気のある人が自分に触れていて、押さないわけがない。

 好きだと強く思ったなら、触りたいし、触られたい。迷惑にならないなら、想いも伝えたいし、できれば……想われたい。


「あ……アゼル……」


 この部屋の薄暗さと肌を触れ合わせる興奮が、俺をいつもより大胆にする。

 首元にあるアゼルの髪にスリ、と頬を寄せて、胸元をなでる手に自分の手を重ねた。


「お前は胸を触るのが好きみたいだが……」

「いや……ッ、……ま、まぁ、そうだぜ」

「ん……なら、俺の胸はどう、だろうか……」

「ど、どうっ……!?」

「こう、一般的に気持ちのいい胸じゃない俺の肌に触れるのは、嫌じゃないか? その……硬いだろ……?」


 そっと、そっと。
 誘われたから嫌々仕方なくだなんて言われたら、目も当てられないほど落ち込みそうで、慎重に言葉を探す。




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