56 / 901
一章 魔王城、意外と居心地がいい気がする。
53※微
しおりを挟む「あ……あぁ……っん……」
「っ」
ヌル、ヌル、とはしたない淫液が滑り、気づいたアゼルがビクッ、と身を固くする。
何度か腰を揺らめかせると手と陰茎が粘液を潤滑油に擦れ、敏感な粘膜が喘ぐ。
再開した直接的な刺激による快感が、すぐに下腹部へジワジワともたらされ始めた。気持ちいい。けど、もっと欲しい。
(早く、イキたい……)
理性の飛んだ快楽中毒の男と化した俺は、至ってシンプルな欲求に突き動かされていた。
「う、ぁ、しゃ、シャル……!?」
「責任、とってないだ、ろう……ん、あ、っ……はっ」
催淫毒と愛撫のコンボでトんだ頭は、もちろん、羞恥心なんてものを感知しないのだ。
アゼルの手の上から自分の手を重ね、ヌルヌルと擦り合わせるだけだった勃起を強く掴む。そして更に激しく腰をくねらせ、追い求める絶頂。
「ぁぜる……んっ、んん……もう、イキたい……はっ……ぅ、っ」
「は、ぇ……っ! っ?」
「あ、あ、クる、駄目だ、んっ」
好き勝手に責めていたのが、一転して好き勝手に使われる展開に、今度はアゼルが混乱する羽目になる。
「あぁ、ぁ……っ」
そして上り詰めるにつれ激しくなる他人の手を使った自慰に、ビクンッ、と身を痙攣させ、俺はあっけなく高まった精を吐き出した。
「っく、なん、つー……っ」
「はっ……は、ぁ……」
ようやく迎えた射精によりくたりと脱力する俺のそばで、唖然と呟くアゼルの声。
『シャル、もっと俺に見せろ』
未だトロトロと白濁とした精液を漏らす自分の陰茎を見ながら、俺は先ほど言われた言葉を思い出す。
ふっ、と息を漏らして上目遣いにアゼルを見ながら、得意な笑みを浮かべてみせた。
「はっ……ちゃんと、俺の、見られたら、困るところ……見せた、だろう……?」
こんな情けないところを見せてほしいなんて、ちょっと変な趣味だが……これでいいのだろうか。
けれどその返答を聞くより先に、俺の意識は加速度的に薄れていく。
呼吸に合わせて上下する体がヒクヒクと痙攣して、一気に今日一日分の疲労が押し寄せてきた。張り詰めたものが消え、脳内麻薬が切れたのだろう。
──あぁ、疲れた……今日は、動き回って、心も余裕がなかったしな……。
──まあでも、気持ち、よかったし……これはこれで、いいか……すごく……眠い……。
心身共に満足した俺は、酷使した体が休息を求めるまま、抗うことなく落ちていく。
呆然と俺を抱きとめるアゼルに後を任せ、微睡みの中へ意識を飛ばしたのだった。
「……はっ! こ、この野郎眠ってやがる! ……いやそれより、俺、なんで……勃ってるんだ……」
残された魔王は、頬を真っ赤に染めてドギマギと困惑しながら呟く。
毒に犯されてもいないのに、その気になっている自分の愚息。
魔王はただ『吸血はしたいが自分の毒で彼が困るのなら、その責任を取ればもっと長く触れ合えるのでは?』と打算と罪悪感で提案した。
そこにやましい気持ちはなかったし、あわよくばなんて心もなかったはず。
それがどうして自分は彼を〝かわいい〟と思い〝口付けたらどんな顔をするのだろうか〟なんて、考えてしまったのか。
いくら人間ほど種族や性別を気にしない魔族とはいえ、憧憬や恩義に満ちていた勇者の痴態だ。
エロいとは無縁のはず。
……抱きたいとは、もっと無縁のはず。
吸血のために伸ばしていた牙を元通りにしながら、ペロリと唇を舐める。
「……甘ぇ……」
尊敬と憧憬の好意が急速に色を変え、形を変える──名前のわからない感情。
魔王は自分の変化にとまどいながらも、腕の中で満足気に眠る大切な人を、しっかりと抱き締めた。
81
お気に入りに追加
2,680
あなたにおすすめの小説
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる