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一章 魔王城、意外と居心地がいい気がする。
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しおりを挟む「こら、重い」
「頑丈なんだろォ? 勇者」
「ん……もちろん。勇者さんは頑丈だとも」
ベッタリと腰に抱きつく竜に、早々に白旗を上げてよしよしとなで続けた。
引き下がる気はないようだ。
変なことを言ったからか、なんだか距離が近くなった。物理的にというより、心理的に。
前向きに捉えて角の付け根を擦ってやると、グルル、と低く唸って気持ちよさそうに目を閉じる。
ちょっとかわいいかもしれない。
「あぅ……死毒の竜、ヒュドルドに自分から触るなんて、変わった人間だなァ……」
「うん? 触ったら死ぬのか?」
「能力を使うと高確率で毒の状態異常入るぜ。俺が意識してないと大丈夫。でも……突然能力使うかもだろ? 魔族にだって致死効果有りだぜ。こんなに継続して触る怖いもの知らず、魔界にも滅多にいねェよ」
「それはまた凄まじい……そうだな。俺も死ぬのは怖いな……」
ガドをなでくりまわしながら呟く。
若干顔が青くなった。異世界生活が長いとはいえ、中身は現代日本人だからな。毒で死ぬことは身近ではない。
しかしその毒竜さんは、角の付け根が弱いようだ。ヒュドルドがなのかドラゴン全般なのかガドの弱点なのかはわからないが、指先でいじるとあうあうと唸るのが面白い。
「そのくせ手ェ止めないの、ほんと変なやつ。んん……これは遊びに来て正解だったなァ……よくわかんねぇけど、シャルのこと気に入った」
「それは嬉しい。俺もガドとのんびりこうしてくつろぐのは心地いいぞ」
なんせこの部屋、牢はできることが少ない。
なまじ手足が自由でいい生活をさせてもらっているから、穏やかな心は娯楽を求めるのだ。
食事を運ぶコウモリもどきに仕事を邪魔しない程度に絡んだり、アゼルとちょっとした雑談をすることがなんとか心に潤いを与えている。
そこにガドという話し相手が加われば、俺としてはとても嬉しい。
そしてあわよくば、俺にもできる魔界の仕事を見つけたいのだ。捕虜オーケーな職場はないものか。
「俺また遊びに来るぜ。ま、ちょっと次はムズいかもだけど、窓のカギ開けとけよォ」
「いや、扉から入ってくれ」
当たり前のオーダーなのに、むむ、と難しい顔で眉を寄せられた。
空飛ぶガドとしては手間だと思うが、窓から来られるとビックリするんだぞ。
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