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融解コンプレックス(2)
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しおりを挟む「仲直りセックスしよか……俺の名前、なおりだけに……」
「おもんないねんッ。もっかい喧嘩したいんかドアホッ」
「ユキ、愛しとるよ」
「ぉひっ」
「ユキめっちゃ好きや、大好き……もぉ我慢したない……ユキが好きやもん……好きやから、いっぱいやらしいことしたい……やらしいユキ大好き……」
「す、好き好き言うたらヤれると思うなよ!」
雪が必死に拒否すると、直は「あかんか」としょげたものの、さわさわと雪の腰をなでている。引く気はないらしい。
「俺、オカンのエロ本で勉強してきたで?」
「勉強ってなんの?」
「ん……? んと、男の気持ちぃとこ……? ケツ使ったら、なんかかわいいゲイが『おちん✕んしゅごい』って、言うとったな」
「おん。それ低音ハスキーボイスのお前が真顔で言うセリフとちゃうわ。やめぇ」
「あとはなんか『けちゅま✕こ』とか『らめぇいっちゃう』とか……そんなん多いねん。たぶんめっちゃ気持ちぃんやと思う」
「気持ちぃかは知らんけどやめぇって言うとるねんから口に出すな! その資料音読こっちが恥ずかしいねん!」
「? 恥ずかしない」
「お前はな!?」
知識を披露してオーケーを貰うことしか考えていない直に、雪は呆れ半分照れ半分で睨みをきかせた。
直の母もまさか自分の持っている卑猥な趣味本のセリフを低音ハスキーボイスの息子が真顔で読み上げているとは、夢にも思わないだろう。
というか冷静に考えると、直の母が悲惨すぎる。
隠していただろう趣味本が息子にバレバレなんて、雪なら宛のない旅に出る案件だ。
「俺かてわかっとるで……ほんまはこんなん、言わんねんやろ? やり方の勉強につこただけやからな」
「そこちゃう。セリフや」
「ただの漫画の文字列やん……」
「ただのちゃう。エロ本や」
「そか……? 絵としては大事なとこ白くて、あんまエロさ感じんかったけど……」
「そもそもお前おばちゃんのコレクション勝手に読み漁るんやめ。たぶん絶対息子に読まれたないやつやで」
「ユキの寝込みのが、抜ける」
「聞けやぁ!」
流石に一発殴ってやろうとすると、途端に直は口にチャックをつけた。
雪の怒りにも敏感な忠犬め。
……裏を返せばそれだけよく見ているということで、ズレていても一直線な直に報いるべきではあるだろう。
雪はうぅぅ、と唸り、十分に苦悩してから、どうにか腹を括る。
「セックスは、せん」
「…………」
「でもっ、……一緒に、抜く」
「え?」
意を決して口にすると、お口にチャックをして拗ねていた直が勢いよく顔を上げた。
そんなにマジマジと見ないでくれ。こちとら今年一発目の全力譲歩だ。
「一緒に抜くん……?」
「っや、やってしゃあないやん……っ」
ポカンとする直に見つめられながら問われた雪は、カァァァッと耳まで熱くなった。
頬に水滴が浮かび上がる。熱い。
蒸発しそうだが、自分の体温上昇くらいじゃそこまでドロドロに溶けたりしない。
「中とか触られんの無理やし、俺の手ぇほんま氷並みにひゃこいから、ナオの触ったらナオのも手ぇも縮こまるやろ……? 扱き合いもセックスもあかんって言うたら、一緒に抜くくらいしかやれへんねん……!」
あれだけ言われちゃ、雪とて気持ちの上では直に抱かれてやりたかった。
貞操を大事にする性格でもないのだ。
セックスなんてしたことがなくても、本音を言うと凄くしたい。人と交わるということがどんなものか、凄く気になる。
しかし怖いものは怖かった。
服の上からならまだ触られるのも触るのも我慢できるので、ここはこれで一つ。
だって、今なら雰囲気やテンションも込みで、直に勃つ気がする。
「自分でシてんのなんか、人に見せれへんけど……ナオやったら、まぁ……ええわ」
そんな気持ちで提案しジワジワと溶ける赤らんだ雪を前に、直は雪の足の間をジーンズの上から強くなで上げた。
「うっ……!」
「そんなんめっちゃ嬉しい……」
「ナ、ナオ、あんま触らんといてっ」
「ほなはよシよ……? 我慢できん……俺、足絡めたままがええな、ユキと」
「わかったから、っひ」
接触避けする雪に許されたことが余程嬉しいらしく、直は雪の足に自分の足を絡ませて雪を煽る。
カリカリスリスリと執拗に触れられ、雪は慌てて手袋を脱ぎ捨てた。
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