26 / 30
融解コンプレックス(2)
11
しおりを挟む「仲直りセックスしよか……俺の名前、なおりだけに……」
「おもんないねんッ。もっかい喧嘩したいんかドアホッ」
「ユキ、愛しとるよ」
「ぉひっ」
「ユキめっちゃ好きや、大好き……もぉ我慢したない……ユキが好きやもん……好きやから、いっぱいやらしいことしたい……やらしいユキ大好き……」
「す、好き好き言うたらヤれると思うなよ!」
雪が必死に拒否すると、直は「あかんか」としょげたものの、さわさわと雪の腰をなでている。引く気はないらしい。
「俺、オカンのエロ本で勉強してきたで?」
「勉強ってなんの?」
「ん……? んと、男の気持ちぃとこ……? ケツ使ったら、なんかかわいいゲイが『おちん✕んしゅごい』って、言うとったな」
「おん。それ低音ハスキーボイスのお前が真顔で言うセリフとちゃうわ。やめぇ」
「あとはなんか『けちゅま✕こ』とか『らめぇいっちゃう』とか……そんなん多いねん。たぶんめっちゃ気持ちぃんやと思う」
「気持ちぃかは知らんけどやめぇって言うとるねんから口に出すな! その資料音読こっちが恥ずかしいねん!」
「? 恥ずかしない」
「お前はな!?」
知識を披露してオーケーを貰うことしか考えていない直に、雪は呆れ半分照れ半分で睨みをきかせた。
直の母もまさか自分の持っている卑猥な趣味本のセリフを低音ハスキーボイスの息子が真顔で読み上げているとは、夢にも思わないだろう。
というか冷静に考えると、直の母が悲惨すぎる。
隠していただろう趣味本が息子にバレバレなんて、雪なら宛のない旅に出る案件だ。
「俺かてわかっとるで……ほんまはこんなん、言わんねんやろ? やり方の勉強につこただけやからな」
「そこちゃう。セリフや」
「ただの漫画の文字列やん……」
「ただのちゃう。エロ本や」
「そか……? 絵としては大事なとこ白くて、あんまエロさ感じんかったけど……」
「そもそもお前おばちゃんのコレクション勝手に読み漁るんやめ。たぶん絶対息子に読まれたないやつやで」
「ユキの寝込みのが、抜ける」
「聞けやぁ!」
流石に一発殴ってやろうとすると、途端に直は口にチャックをつけた。
雪の怒りにも敏感な忠犬め。
……裏を返せばそれだけよく見ているということで、ズレていても一直線な直に報いるべきではあるだろう。
雪はうぅぅ、と唸り、十分に苦悩してから、どうにか腹を括る。
「セックスは、せん」
「…………」
「でもっ、……一緒に、抜く」
「え?」
意を決して口にすると、お口にチャックをして拗ねていた直が勢いよく顔を上げた。
そんなにマジマジと見ないでくれ。こちとら今年一発目の全力譲歩だ。
「一緒に抜くん……?」
「っや、やってしゃあないやん……っ」
ポカンとする直に見つめられながら問われた雪は、カァァァッと耳まで熱くなった。
頬に水滴が浮かび上がる。熱い。
蒸発しそうだが、自分の体温上昇くらいじゃそこまでドロドロに溶けたりしない。
「中とか触られんの無理やし、俺の手ぇほんま氷並みにひゃこいから、ナオの触ったらナオのも手ぇも縮こまるやろ……? 扱き合いもセックスもあかんって言うたら、一緒に抜くくらいしかやれへんねん……!」
あれだけ言われちゃ、雪とて気持ちの上では直に抱かれてやりたかった。
貞操を大事にする性格でもないのだ。
セックスなんてしたことがなくても、本音を言うと凄くしたい。人と交わるということがどんなものか、凄く気になる。
しかし怖いものは怖かった。
服の上からならまだ触られるのも触るのも我慢できるので、ここはこれで一つ。
だって、今なら雰囲気やテンションも込みで、直に勃つ気がする。
「自分でシてんのなんか、人に見せれへんけど……ナオやったら、まぁ……ええわ」
そんな気持ちで提案しジワジワと溶ける赤らんだ雪を前に、直は雪の足の間をジーンズの上から強くなで上げた。
「うっ……!」
「そんなんめっちゃ嬉しい……」
「ナ、ナオ、あんま触らんといてっ」
「ほなはよシよ……? 我慢できん……俺、足絡めたままがええな、ユキと」
「わかったから、っひ」
接触避けする雪に許されたことが余程嬉しいらしく、直は雪の足に自分の足を絡ませて雪を煽る。
カリカリスリスリと執拗に触れられ、雪は慌てて手袋を脱ぎ捨てた。
14
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
たまにはゆっくり、歩きませんか?
隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。
よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。
世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。

彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる