誰かの二番目じゃいられない

木樫

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2.バカにされては笑えない

14※

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 自分の中に入っていた手でゆっくりと肉棒を扱き、早く、と強請る。

 そしてやっと丸みを帯びた先端が入り口をつつき、グプッ……と朝五の中へ頭を潜り込ませた。


「く、っ……ふ……」


 じれったい動きだ。
 探り探りに埋め込まれていく。

 せっかく亀頭を咥えたのに、逞しい勃起は半分ほどしか与えられず、ぬちぬちと慣らすように往復している。

 きゅっと口を締めて誘ってみるが、夜鳥は誘いに乗らない。朝五の太ももや結合部を指先でなぞって具合を見ている。
 本来の用途ではない器官に自分の男根が呑み込まれている様が信じがたいらしい。

 男を相手にしたことがないらしい夜鳥には神秘に思えても、抱かれることに慣れている朝五にとっては熟知した行為にすぎない。

 男に貫かれる快感を知っている淫靡な肉体には、夜鳥の挿入は慎重すぎる。

 こんなに優しく抱かれたこともない。

 前立腺のある浅いところを小刻みに往復されるのも気持ちがいいけれど、朝五が好きなセックスは、骨がぶつかるくらいに激しいものだ。もどかしさからつい尻が揺れる。


「あ、も……思い切り突っ込めよ……っ」

「でも、半分でも食いちぎられそうなくらい窮屈なんだよ……?」

「はっ……あっ……それは最近使ってねぇからでっ……んっ……すぐ慣れるって……」

「それに俺、初めてだから、朝五に傷をつけるかもしれないでしょ」

「や、俺のほうは割と使い込んだわけでして、マジで慣れてっから、早く……っん……はっ……ゆっくりされんの、なんか変……あっ……奥のほうがムズムズしてるっぽいし……?」

「じゃあ、挿れてから揺らすかな」

「っぐ、ぅあっ……!」


 焦れる朝五の懇願に、夜鳥はずぷんっ、とひと息に根元まで突きこんだ。

 だからと言っていきなり挿れるな。
 内側から声をあげされられたようで、不意打ちをくらって決まりが悪い。

 不貞腐れた朝五が腕を伸ばすと、夜鳥は拙いキスをした。
 キスは朝五に分がある。こちらから舌を絡めて唾液をすすり、唇ごと感じさせてやると、中のモノが悦さそうに動いた。


「ん……ふ……んっ……んんっ……」


 ぐち、ぐち、と半分ほどは埋め込んだまま短いストロークで腰を揺すり、大きさに慣らされていく。

 直腸を他人の肉に支配される感覚。
 内臓が押しつぶされる圧迫感。

 客観視すると拷問に近いが、これがすこぶる気持ちいい。

 前立腺が往復する幹にぐりぐりとこそがれると自然に喘ぎ、汗ばんた肌が淡く色づく。セックスは久しぶり。他人の体温が朝五は存外好きなのだ。


「はっ……あ、っ……あっ……!」


 唇を離して、喉をそらせる。
 こなれた体なもので、簡単だ。

 挿れられるだけで肉襞はきゅうきゅうと収斂し、勃起した性器が濡れる。


「あ……っ…ん……んっ……」


 突き上げるというよりは、送り込むような腰使い。恥骨で尻肉を押しつぶしているみたいな動きだ。

 トン、トン、とゆっくり丁寧に動く。
 しかし奥をグリ、ときっちりえぐるのだから、そそられる。──今日はなぜか、めちゃくちゃに抱かれたい気分なのに。


(焦れって……)

「痛くない?」
「全然、ん、く」


 両足を抱えるように覆いかぶさられ、待ち望んだ快感に甘く揺らぐ朝五の顔を、夜鳥の瞳が映し出した。


「はっ……夜鳥……もっと激しくシてくんね……? そういう気分、っん、あっ」

「う、ん。でも、男はどこがいいのか難しい。どんな感じで突けばいい?」

「お前ので腹側こそぐ感じ、っあ、っ……んっ……そうそこ……っ、んっ……」

「ここ?」

「あっそこっ……そこイイっ……んっ……そこばっか突いてて……はっ……っう……あっ」


 覚束ない様子で腰を振る夜鳥に自分の弱いところを教え探らせると、夜鳥は従順に角度を調整する。

 奥を貫かれる時より、退かれる時のほうが気持ちがいい。
 カリ首が前立腺を引っ掻くように調整させ、そのまま振り子のように一定のリズムで律動を繰り返させる。


「ンっ……ンっ……」


 筋肉質な尻と逞しい恥骨がぶつかり合うたび、朝五はしどけなく開いた唇から悦に入った声を上げた。




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