人の心、クズ知らず。

木樫

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甘話 サキと年上下。

04(side蛇月)

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 それから数時間後。

 言葉だけじゃ俺の愛ってやつが全て伝わる気がしない、と考えた咲が俺と忠谷池サンをベッドに運んで一緒くたに抱き潰したものだから──どちらともなく「連休は二人セットで謳歌したい」と懇願してなんとか丸く収まった。

 シャワーを浴びると言う咲を送り出した犬と猫が、寝室に取り残され、揃ってチーンと横たわる。

 いやだって、死ぬかと思った。
 なんかもう、こう、感じ過ぎて。

 人間コーフンし過ぎたらケモノみてェな声上げて暴れながら、鼻血吹いてイクらしい。
 ンなわけネェ。ケド現実よ。


「ッベー……だる絡みかまちょしたのに予想以上にデロデロに甘やかした言葉もらって、末路がコレとか……とりあえず咲スキィ……」

「今回は少し、堪えたな……わかりにくい咲がわかりやすく感情表現を試みると、咲で落ちぶれた私たちの愛情耐性ではスペック不足だ……」

「それなァ~……」

「まぁ、咲は何事も手加減できない人だからね。しないのではなくできない。フィットできない私たちの問題さ」

「でも忠谷池サンは、ちょっと手加減してくれてもよかったのに……」

「お生憎様、私は咲の恋人たちには一切手加減をしない・・・。そう怯えるな。キミは野山や初瀬よりだいぶタフでテクニシャンだよ」

「うへ。バイブ向けねェで」


 合格だとばかりの言い草とともに雑にヒュッ、とローションで濡れたバイブの先っぽを向けられた俺は、眉を顰めて青い顔を背ける。

 忠谷池サンには勝てない。
 忠谷池サンはオトナだ。

 よく俺を含めた咲の恋人たちをあらゆるジャンルで値踏みするケド、それは本人が誰より咲に見合うために努力して、誰より咲をハイスペックで飾り、誰より咲に高値を付けているからである。

 だって咲は自分に興味ねーモン。

 なんでか知らんけどボディケアは欠かさずってママの言いつけから解放されて、メシも気まぐれになるほどさ。

 てか高校出てからずっとだぜ?
 まぁシャワーは気持ち悪いって浴びてたけど、そんまま全裸で寝てたり、エアコン使ってなかったし。

 そんでも生きてたのは、忠谷池サンが咲の生活を管理してたからだ。

 咲の部屋のインテリアを整えて、自分の息のかかったハウスキーパーを雇って、咲の金をアホほど増やして、マナーや教養、経験、咲のためになるものをたくさん咲に提案した。

 自分に興味のない咲はそれを気が向けば受け入れて、レベルアップ。
 この人はそうやって世間向けの咲の価値を高めてるンだよ。

 言いたかねぇけど野山もなァ。
 アイツは見てくれ担当。フン。

 閑話休題。

 とにかく、忠谷池サンの王様らしい咲を事実アゲまくれるオトナは、抜け目がなくておっかねーってコトだぜ。

 エロ方面もメンタル強過ぎィ。
 強かってヤツ? 咲と揃って俺を犯している時も、俺と咲に犯されている時も、うまくやって感じてた。

 乳首に低周波装置挟んで亀頭と連結させられても悦んでたモン。
 あ、あと貞操帯つけてたから玉もギッチギチに縛られてた。

 イキ地獄射精管理、ウヘェ。
 王道とはいえ、そこのコラボを躊躇しないところが咲である。

 俺は思い出しタマヒュンしそう。

 なのに忠谷池サンは、咲が貞操帯で固定したエネマグラにベルト付けてフックに引っ掛けた挙句ケツが持ち上がるくらいギッコギッコ船こがせたケド、嫌だとも無理だとも言わなかった。

 その忠谷池サンのアソコを舐めていた俺は、ケツに手首までぐっぽり挿れられて、これじゃしゃぶれないと泣き言をあげていたのだ。

 ぜーんぜん勝てる気しねぇだろ?
 スッゲ、悔しい。

 俺は確かに咲だけのニャンコで、咲を害する相手は鋭い爪で引っ掻く。

 でも──忠谷池サンと野山。

 この二人は咲の忠犬と愛猫ながら、咲以外には飼い慣らせないモンスターだ。俺は忠谷池サンがおっかないし、野山はいけ好かない。

 まぁ喧嘩はイーブン(やや負け気味だけど絶対勝つ)な野山にゃあ性技とマニアック経験値で圧勝してるってわけで、ドヤ顔できるけどなァ。

 となると可愛げ以外なに一つ勝ち目がない忠谷池サンが怖いのは、当然ってなもんだぜ。くわばらくわばら。


「あーあ、オトナってふしだらだなァ……そんな、意欲的にオレを抱いたり、抱かれたりィ? 咲が楽しいならいいケド、オレ個人的には、別に忠谷池サンをイジメたいとか思わねーモン」


 わかっていても、やっぱ悔しい。

 不貞腐れて、拗ねてしまう。
 俺は咲を信仰するばかりで、隣には立てない。年上は、ズルいゼ。


「意欲的で当然。私は、咲の命令で咲の愛する人と余興に興じているのだろう? 命令に従う。そして期待値を超えて要求に応える。咲を喜ばせるためによく働く男だと、咲の目の前でアピールできるんだよ。最高に……興奮するがな」


 するとメガネのない双眸が閉じられ、珍しく鉄仮面な忠谷池サンの口元が、ニヤリと緩んでいた。

 なるほど。
 ──それは年下も、同感だ。

 成人男性二人がゴロンと大の字に横になっても余裕のあるベッドには、アダルトグッズがそこここに転がっている。

 咲のモノは一つしかないので、二人以上を相手にする時は、多種多様なオモチャや雑貨が大活躍するのだ。

 道具はなんでも使い方である。
 咲は趣向を凝らして俺たちを絡ませ、競わせ、気分を大いに高ぶらせるプロフェッショナル。

 だってゼッテェ、見抜くンだ。

 いつか咲が「タツキは俺の命令で壊れてく自分が気持ちいいドマゾだから、過激プレイほど興奮すんのよね」と独り言みたいに言っていた。

 で、おっしゃる通り。

 俺は気づいてなかったのに、カミサマはいつも見抜く。丸裸の淫らな腹。

 そういう意味では、真逆に位置する俺と忠谷池サンもやっぱり似ているのかもしれない。

 意味は多少違うけど──〝粉骨砕身捧げて飼われてイイコダネって褒められたい〟欲望があるところ。


「忠谷池サン。オレ、伊豆あたり旅行誘お~って思ってたんだよなァ」

「こちらは台湾旅行だ、が。今から出発では予定のプランに間に合わない。伊豆で決まりだ。三人分手配しよう」

「んじゃあ観光プランはオレが考えるゼ。ライブツアーであちこち行ってるからオマカセ。あ、でも旅館の部屋は、個室露天風呂」

「ああ。必須だな」


 のそりと起き上がってメガネとスマホを手に取り、どこかに電話をかけてサクサクと段取りする忠谷池サン。

 バケモノ体力だ。
 ……やっぱり似てないかもしれない。

 寝返りすらうちたくないほど気だるい体を丸めて、俺は魅惑の伊豆旅行に向けて、今しばらく体力の回復に務めた。


 了





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感想 13

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みんなの感想(13件)

マヨネーズ
2024.07.15 マヨネーズ

124ページのサキとどmレッスンどんな感じだったのかめっちゃ気になります!!!!!作者様…是非…是非タツキとショーゴとサキの絡みまた続きを書く機会がありましたら…是非書いて欲しいです…!!作者様の素晴らしい作品いつも読ませていただいています本当にありがとうございます素晴らしいですありがとうございます

木樫
2024.07.20 木樫

マヨネーズさん
お久しぶりdぬんっ!? まさかドMレッスンのその後を欲してくださる猛者がいるとは(喜)
仕事と暑さで脳が沸騰中の木樫ですが、気に入っていただけてガッツポーズ!
むふふ、いつの日になるかわかりませんがいつか書きたいと思いますぞ。
こちらこそ、ハッピーなお言葉をありがとうございますぜ!
人クズを気に入っていただけて感謝感激雨木樫。

解除
マヨネーズ
2024.05.31 マヨネーズ

またずっと見続けたい素晴らしい作品です。ありがとうございます

木樫
2024.06.02 木樫

マヨネーズさん
ずっと見続けたい。テンションの上がる褒め言葉ランキングトップランカーのワードをいただきありがとうございますぞ。
自動的にマヨが好きになりそうだ(?)
こちらこそ、人クズを好きになってくださりありがとうございましたぜ!

解除
ゆの
2021.08.22 ゆの

番外編助かります😭(他作品含めn回目)
もうTwitter始めちゃいましょうかね!??
すっごく良かったです✨
毎度の事ながら更新通知に驚かされております、、笑
素敵な甘話ありがとうございます〜🥰

木樫
2021.08.28 木樫

ゆのさん
はっ! いつも作品たちへの閲覧、コメントなど癒しをありがとうございまする(*ノД`*)
良かったと言っていただけることが幸せ木樫……!
いえいえ! ツイッターでのSSは普段は不定期なのでご注意(*´ b`)
ですがゆのさんがそういったお気持ちになっていただけただけで、木樫の脳内は現在ヒャッホイハッピーフェスティバルであります!
そして驚かせた、ですと……? ゲッヘッヘッヘ〜(悪人顔)
こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました(*´ω`*)

解除

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