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第六話 サキとアヤヒサ。
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しおりを挟むそれを追いかける前に、ナカムラさんたちにもスマイルスマイル。
「ん? どした?」
「いや? ナカムラさんみたいな悪い大人、俺はいいと思うなって。興味あるかも。遊び方、教えてもらえたりすんのかな」
「……へぇ」
イチ対応の甘ったるい顔は消して、含みのある艶やかな顔を作ってみた。
他人の弱みに漬け込むのは正しく有効な手段だかんね。
全然イイじゃん? ここにいる仮面たちはきっとみんな悪い大人だが、狡猾に隠しているところは流石有力者だ。
だから悪い遊びを肯定する。
できれば混ぜてほしいと、漬け込みやすそうな欲も見せて。
ナカムラさんは一瞬黙ってから楽しそうに立ち上がり、俺の後ろを着いてダーツボードにやってきた。
「やだねー。俺は優しいって言ってんだろ? 咲くんこそ、悪い子だなぁ? ん?」
「そ。俺ワルイコだから、接待ダーツはしねぇよ? ハンデなしね。んー負けたらなんでも言うこと聞いてほしいなー。とか?」
「わーお。オジサンそういうの大好き。みんなでやろうぜ。きっと楽しくなる」
ノッてきたのかナカムラさんが周囲に声をかけるもんだから、騒がしいニーもノッてきて、暇つぶしがてら全員が悪ノリし始めた。
こうなると鉄仮面のまま外交中のアヤヒサも、当然乗らざるを得ない。
わざと困り顔を作ったもののさらりと人数分の矢を用意して差し出すので、ナカムラさんは上機嫌にアヤヒサの肩を抱き、アヤヒサは微笑みで対応する。
ちょうど保管室からボトルを持ってやってきたサトウさんは、拗ねたように唇を尖らせた。
それほど時間も経っていないのに、俺とのサシ飲みがおじゃんになったからだ。
サトウさんはこの状況に悪態を吐いたけど、気が気じゃないイチとは逆に俺はニッコリスマイル。
さてさて。
興味もたせるのも大変なんだぜ? アヤちゃん。どこまでやれば泣きついてくるのかねぇ。
かけ違えたボタンの位置に気がつくまでのアクティビティ。
だと思っているのは俺だけかもな。
疑惑とは裏腹に、俺のアクティビティはなかなか面白いほうへと進んでいった。
一戦目はジャブ。
順位はニーの勝ち。アヤヒサの負け。
アヤヒサはニーのオネダリでウン百万の腕時計をやすやすあげた。気前いいじゃん。
言い出しっぺの俺はそこそこ。イチも下手くそな割には健闘の一戦。
下手くそなフリをしたアヤヒサは仮面たちの思惑を生贄たちに勘付かせないために調整しているので、ゲームだからとさして悔しむでもなく笑っていた。
本当は真ん中に三投連続入れられるくせに。
むしろこういうの得意だろ?
毎回同じ条件で投げれば当たる。機械的な男にとってルールで決められた点数ゲームほど単純なものはない。
外すのは九分九厘わざとだ。
けれどアヤヒサの接待で、オツムが残念なニーは素直に喜んで次もと勇んだし、仮面たちも心得たものな態度だから、イチも安心と期待感で密かに意気込んだ。
うへー大人って怖いよなー。
しれっと二回戦参加する気にさせちゃってさ。爆ヤバ。
二回戦を始める様を人畜無害なスマイルで可もなく不可もなくを歩き眺めていると、アヤヒサがワイン片手にそば立ち横目で顔色を伺った。
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