人の心、クズ知らず。

木樫

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第四話 ショーゴと浮気。

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 ん? 死体め、蘇ったか。ゾンビじゃん。よーしヘッドショット決めてやんぜ。

 動く死体に期待たっぷり。
 右手を拳銃の形に準備してワクワクとドアが開くのを待つ俺は、ガチャ、とドアが開くと同時にゾンビ目掛けて発砲した。


「はいはぁ~い……」

「バーン」

「ん?」


 歩く死体にとどめを刺そう、と開いたドアに向かって指先から架空の弾丸を打ち出すと、現れたのは見覚えのない男だった。

 とてもショーゴには見えない男だ。
 少し寝癖のついた茶色の髪がうさぎのようで、顔立ちや髪型は地味めのホストっぽい。うさホスト。なかなかイケメンだがショーゴらしくはない。


「ショーゴ、整形したの? 俺は前のほうがどっちかゆーと好みだぜ。これはちとイメチェン激しすぎ」

「待て待てこんな時間に訪ねてきて大ボケかますなし! 別人でしょどう見ても!」

「あ? そなの? じゃあそこから出てくんなよややこしいじゃん」

「な、なんで怒られてんのオレ……てか誰なのお前……」


 別人かよ。おもんね。
 じゃーやっぱショーゴは死体だ。

 うさホストはパーカーにジーンズ姿で頭に手をやり、心做しかゲッソリ顔で俺を見る。いやその言葉そっくりそのまま返すけど。アホだろコイツ。

 チラリと横目で伺うが、表札もルームナンバーもショーゴの名前でショーゴの部屋だ。パラレルワールドかしら。

 うーん、と首を傾げる。


「ショーゴは?」

「リーダーは寝てるよ。つかよいこはみんな寝てるに決まってんだろバカちん。時間見やがれ。そして名乗りやがれ」

「まだ寝るには早いっしょ、ボク。俺は息吹 咲野。ショーゴは漢字いっこ取ってサキって呼ぶけど。まぁ呼ぶのに不便だからあるのが名前なんで、呼び方はなんでもいいよ」

「んっ? ってことは、お前が咲……?」


 ニンマリ笑って愛想よく名乗ったのに、うさホストは俺の名前を聞いて目をまん丸と驚いた。はは、失礼。

 んな珍しい名前じゃないでしょ。
 さきは女っぽいかもしんねーけど、咲野さくやはどっちでもイケんだろーが。改名しちゃうゾ。する気ねぇけど。

 とはいえ名前はさておき、俺はうさホストに興味がない。

 どうでもいいから早く中に入れてほしい。死体ではなかったショーゴを夢から引きずり出す仕事がまだ残っているのだ。

 しかし玄関口を封鎖するうさホストは、へ~ほ~と俺を観察している。

 コテン、とニンマリスマイルのまま首を傾げてみても、うさホストはジロジロ不躾に俺を見定める遊びをやめない。

 寒いって。あんま感じねぇけど。
 てか見ててもつまんねーっしょ。俺変形とかしないし血の気失せてるし。


「ふぅん……聞いてんぜ。ずいぶんな鬼畜ヤローだって。腐れジャイアニズムで他人を振り回す王様気取りは楽しいか? ドクズの咲くん」

「ワーオ有名なの? 俺。ってか立てんの飽きたから中入んね? 呑気に死んでるショーゴの目玉回収してぇし」

「ダメダメ、諦めてちょ。リーダー……翔瑚さんは俺と付き合ってるから」


 ……。へぇ。

 無礼なうさホストは、初めて俺の興味を引くことを言った。




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