悪魔とダラダラ異世界道中

灯籠

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第12話

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 自給自足生活を始めて、数日が経った。この数日間は、自分でもびっくりするくらい充実していた。そして、好奇心を開放していた気がする。

 コーラ色のスライムの肉体を食べてみたら、雑草の味しかしなくて吐いてしまったことがあった。じゃあスライムの核はどうなのだと思ってかじってみたら、やっぱり雑草の味が凝縮されていたこともあった。

 そういや、水の上を走る技術も手に入れたな・・・などと思い出を振り返り、この生活を美化した。

 もちろん、少し気になることもあった。俺が初めて入るような場所で、俺と同じように木が倒されていることがあった。それでも、脅威となるものでもなかった。

 そんな俺の暮らしに、一つだけ欠けているものがあった。

 そう、他者だ。

 俺は生まれてから今に至るまで、毎日欠かさず他人に囲まれていた。

 確かに、俺はその環境が嫌になってこの異世界に来た節があったが、おそらく俺は、一人になりたかったわけじゃない。俺は、素直でいられる環境と、素直でいられる相手が欲しかったんだ。

 そんな意識を持ち始めてみると、今の自分がとても寂しいものであることが分かってきた。素直でいられる環境が得られた分、もう片方の欠落が際立ってしまうからだ。

 俺にとってのそれがイーギであることに気づくのに、時間はかからなかった。



 次の日になって、俺はイーギを探してみることにした。とは言っても、この日は森を歩き回り、今後の方針を考えるだけにするつもりだった。

 しばらく森を歩いていると、遠くの方からかすかに声がしたことに気がついた。この森に入ってから何らかの声を聞いたことがなかったので、急に緊張が走った。

 様子を見ていこうと思い、俺はその声がしたところに向かっていった。



 あの忍者のように木を渡って向かうと、また遠くから音がした。今度は、声と物音が同時にやってきた。声から察するに、男なのだろう。

 しばらく進むと、辺り一帯の木がほとんど引っこ抜かれていることに気がついた。どんだけの力持ちなんだ・・・?

 音がだんだんと大きくなっていくので、俺は引っこ抜かれた木の陰に隠れ、気配を消すことにした。

 しばらくすると、その男が叫びだしたのが聞こえた。

 「全裸フィーバーアァァァァァ!」

 声とその内容からその男がだれなのかなんとなく分かった。イーギだ。しかし、なぜあいつはそこまで壊れてしまったんだ・・・? 

 といった推測をしていると、音ですぐそこまで来ていたのが分かった。俺はすかさず木から飛び出て、

 「おーい、イーギ!俺だ!」

 とイーギに向かって叫んだ。すると、

 「エエ!?シイマァ!?」

 と言い、イーギが驚いた。イーギは人間の姿のまま、全裸で爆走をしていた。

 ・・・ってちょっと待て!あいつ、とんでもない勢いで走ってきてないか!?

 避けようとする時間もなく、俺とイーギは正面から激突した。俺達は地面を転がりながら吹っ飛び、木に何度もぶつかって停止した。

 「イテテテ・・・」

 俺が木にぶつけた頭をさすり、周りを見渡すと、イーギの姿が見えなかった。転がっているときにはぐれたのだろう。どうやら俺よりも吹っ飛んだらしい。

 俺は倒れた木を辿ってイーギを探すことにした。



 すぐにイーギは見つかった。はっちゃけていたのか、悪魔の姿になっていた。やっぱり痛がっていた。

 「おい、イーギ!」

 俺が声をかけて笑顔で手を振ると、イーギは

 「よう、久しぶリ!」

 と返事をした。そして近づいてきたイーギを、

 「オラァ!」

 振っていた右手で殴ってやった。

 「痛ってえナ!何すんだヨ!?」

 「あの出来事の恨み、忘れてねえんだよ!」

 「もういいだロ!俺だって被害者なんだから、それでいいじゃン!」

 「それ以前に加害者なんだよ!」

 とか言い合いながら、俺はイーギと再会したことを認識した。



 あの騒動の言い合いに一区切りついた後、俺はイーギがなぜこの森に来たのかを尋ねることにした。

 「イーギ、なんでお前はここに来たんだ?」

 「ギルドでシジーヌのやつに出会ってかラ、お前は発狂してどっか行ったダロ?その後に俺もそーゆう奴だと認定されてることが分かっテ、俗世間から離れるためにこの森に入ったんダ。」

 「えっ・・・?お前、俺と全く同じ理由でここに来たのかよ。パクんなよ。」

 「なんだよその言いがかりハ。・・・まあ、そんな感じでこの森に入ったんダ。森に入ってからは色々と楽しんだナァ。とりあえず裸になってみたら、これがまた快感になっちまってサァ!」

 「それで、お前は裸になってたのか・・・」

 「それでもここに来てから一番びっくりしたのハ、スライムを狩りまくったせいか、俺、めっちゃ強くなっちまったんダヨ!いや、なろう系の主人公とか本来の俺ほどの強さじゃないけどサ、けっこーな万能感を味わえるんだヨ。」

 「よ、よかったな・・・」

 ここまで行動が一致していると、何だかこっちが恥ずかしくなるな。

 すると、急にイーギの態度が改まった。

 「なあ、シイマ。」

 「どした、イーギ?」

 「いろいろやられたシ、いろいろやらかしちまったガ、やっぱりお前と冒険の続きがしたいって思っててサ。なんつーか、こう・・・悪かった。仲直りしないカ?」

 「ア、アハハハハハ!」

 俺は我慢できずに笑ってしまった。

 「な、なんだヨ?」

 「やっぱり、お前はバカだなぁ。ちょっとしでかすくらいで、お前はいちいち考えすぎなんだよ。というか、俺達、お互いバカをかまし合う仲じゃないのか?それを謝られたら、こっちが困るわ。しかも、俺が絶交するなんて、いつ言ったよ?」

 「シイマ、お前・・・」

 「止めろよその態度。もうこの話は終わり!さっさといつものようにはしゃごうぜ。」

 「・・・やっぱ、そうだよナ!」

 こうして俺達は、無事に元通りに戻った。 
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