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イメージが付かないネーミングセンス

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 特に因縁をつけられることもなく、コンビニでジュースを買い終えた俺は車に乗り込み、買ったばかりのジュースを一口飲んで、備え付けのドリンクホルダーにジュースを置いた。

 どこに行く所もないがこの駐車場にだけは長居してはならない。ヤンキーとは言っても人間だ、ゲンコツなんてとんでもない。

 かといって家に帰るんじゃ、ジュースを買うためだけに車を運転したことになってしまう。

 茨城ではジュースを買うためだけに車に乗るのは普通のことのようだが、俺にはまだ理解ができない⋯⋯。

 ふと、そぼろ納豆が食べたいなと頭によぎりスーパーでそぼろ納豆を買ってから出掛ける場所を考えることにして、車のエンジンをかけさっさと駐車場を後にした。

 東京に住んでるときでも納豆はよく食べていたが、そぼろ納豆は食べたことがなかった。初めて食べたときは驚きはしたが、いつのまにか癖になり、酒のつまみにしたり、お茶漬けししたりと重宝している。

 納豆に切り干し大根が入っていて、味付けされている物だが、なぜ【そぼろ】なのかはわからない。そぼろと言えば甘じょっぱい肉を連想するが茨城では切り干し大根なのだ。

 やっぱり茨城のネーミングセンスはわからない⋯⋯。

 それから、車で30分ほど走りスーパーに着くと日販コーナーの納豆売り場へ行き、目当てのそぼろ納豆を手に取り、レジで会計を済ませて車へ戻ってくる。

 来間に乗り込むと、シュガーソケットで充電していた俺のスマホがチカチカと光っているのが見えた。

 左手でスマホを取り電源ボタンを押すと着信があったことを通知している。ロックをとくと【たゆんたゆん】からの着信だとわかった。

 一日に一回でもかなり珍しいのに、二回ともなると⋯⋯。

 嫌な予感もするが、かけてみないことには始まらないので、エンジンをかけながらたゆんたゆんに折り返しの電話をかける。

 プルルッ、プルルッ、プルルッ、プルルッ、ピッ。

「もしもし、一日に二回もかけてくるなんて珍しいじゃねーか。どうした?」

「はい⋯⋯。先ほど二体の悪魔を倒しましたよね?」

 テンションがどうも低いような感じが話しだすたゆんたゆんだが、なぜ倒したことを知っている? この人も俺を見ているのか?

「あ、あぁ⋯⋯。何で知ってるの⋯⋯?」

「それは、簡単な事でございますよ。茨城で倒した悪魔の数を意識していたら、一瞬で二体増えたのでそんなことできるのは赤城さんしかおりませんからね」

 あ~良かった。常識から逸脱した事をしてるのはアイツだけだったわ。そりゃ神様と言っても個人のみをガッツリ見るのは流石に無いよな。


「なるほどね、そんなこともわかるんだな。で、どうした?」

「はい⋯⋯。その前に、その⋯⋯今はお一人ですか?」

 随分と勿体ぶるな。

 ⋯⋯あっ! なるほどそう言うことね!

「あぁアイツはいない。一人だよ。だから安心してくれ」

 神様と言っても人を好きになってしまう事だってあるんだろう。それを同じ神様には知られたは無く無いんだろ。あと一体を倒せばこの呪縛からも解かれるし、待っていてくれたのかな。

 まぁ、初めての彼女が神様と言うのはどうなんだろう⋯⋯? しかし、たゆんたゆんだ。断るわけない。

「勝手なのはわかっています⋯⋯。赤城さんに怒られるのも受け入れます⋯⋯。で、でも⋯⋯。でも、あと一体を倒さないではくれませんか? お願いします⋯⋯、お願いします⋯⋯」

 ははっ⋯⋯。俺の想像とは違ったわ。

 嫌な予感の方が正解だったわけだ――――
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